藤巻さんは、ドラマーです。時々、話している時とはまったくちがう顔でドラムを叩いてるのを何回か見たことがあります。その時の藤巻さんの眼差しはとても優しいと思います。
目次
- ドラムの話
- 即興演奏
- 外山さんのレッスン
- セノオGEEと高岡さん
- やりたいこと
※9月24日、南行徳でお話を伺いました。
1.ドラムの話
カマクラ:ドラムを始めたきっかけは何だったんでしょう。
藤巻:結構小さい時から・・・幼稚園くらいの時からマーチングバンドみたいなのをやって、小学校にあがってからも盆踊りとかで和太鼓を叩いたりして。それがすごく面白くて。
カマクラ:幼稚園のマーチングの時から結構、熱中されていた感じでしょうか。
藤巻:うーん、叩くのは面白かったけど、お披露めする時に白いタイツを履かなきゃいけなくて。それがすごい嫌であまりやりたくなかったかも。
カマクラ:ドラムが楽しかったというより、白いタイツが嫌だった、の方が強そうですね。
藤巻:そうだね、強いかな。
カマクラ:小学校の時叩いた和太鼓はどうでしたか。
藤巻:そうだね・・、基本的に子供って太鼓が好きだな〜と。最近キッズ向けのワークショップに参加させてもらって。俺がパーカッションで高岡さん(高岡大祐さん)がチューバで、それにヴァイオリン、フルート、チェロという編成。
カマクラ:へ〜!どんなワークショップですか?
藤巻:生音に対して子供が踊る。本来は踊るためのワークショップなんだけど、子供達はかなり太鼓に群がって夢中になるんだよね。ついこの前の、JAZZ ART せんがわの、屏風と公園で演奏するっていうイベントの時も、子供は太鼓に群がるんだよね。
カマクラ:へ〜!
藤巻:叩いたりとか。叩き始める子供って、目がなんだか狂気じみた感じになるんだよね。すごい。楽しい顔をするというより、叩いてやるぜオラ〜!みたいな顔。
カマクラ:それって子供が叩ける時間もあるんですか?
藤巻:いや、そういうつもりでもないんだけど、置いとくと勝手に。叩かせてあげたりとかもする。
カマクラ:それは昔の自分がフラッシュバックするみたいな、そういうわけでもないんですか?
藤巻:そうだね、自分もこういう感じだったのかな、と思う。
カマクラ:ドラムセットで叩きはじめたのはいつですか?
藤巻:17歳くらいかな。高校の部活を引退して、暇になっちゃって。
カマクラ:ふ〜ん、部活は何をされていたんですか?
藤巻:空手部。
カマクラ:え〜!!
藤巻:それはそれで、夢中になってやってたんだよ。それを辞めてどうしようかなと思った時に、ドラムをやり始めた。最初はブルーハーツとか、ビートルズとかをなんとなくコピーして。
カマクラ:へえ、ロックバンドですね!
藤巻:うん、メロコアとかもコピーしてました。ハイスタとかブラフマンとか。
カマクラ:へえ、思いっきりバンドですね!
藤巻:そうだね。
カマクラ:さすがに、最初っから即興のドラムをされる方って珍しいのかも、と思います。ジャズとかってやってらっしゃらなかったんですか?
藤巻:ジャズは、ドラムをやり始めるちょっと前に聞いて、すげえカッコイイと思ったけど、さすがに難しすぎて。やりはしなかった。家でも父親がソニーロリンズとかを流したりしてて、好きだったよ。コルトレーンとか。
カマクラ:聞いてはいたけど、やりはせず、ロックバンドとかのコピバンをやっていて・・・。
藤巻:そう、大学入っても軽音楽部に入って。大学でもロックとかメロコアとかやってた。だから、大学の頃一緒にやってた人とかが今の俺を見ると、ちょっとビックリすると思う。
カマクラ:藤巻さん自身、今やってることを昔から想像してたわけではないですよね。
藤巻:そうだね。
※大沼志朗氏とのデュオの様子
2.即興演奏
カマクラ:即興演奏に関して、どういうことを考えているのか聞きたいです。
藤巻:即興演奏だから、何も決まってないわけだから、自分が普通に考えていることとか、出そうと思ってることとかが、一番前面に出る音楽って感じがするかな。そうじゃない人もいるとは思う。練習とか毎日してないと、してないってことがすぐに出てきてしまう音楽な感じはする。ものすごく反映される気がする。
カマクラ:ふんふん・・・。
藤巻:やりながらいろんなこと考えたりするからね。
カマクラ:どんなことを考えるんですか?。
藤巻:うーん、すごい変な言い方すると、あんまり即興演奏、上手い下手って言い方で言うと、自分はそんなに上手いほうではないと思う。まだまだ、全体を俯瞰して見れない。即興演奏が始まって、いろんなことがあって、それを上から見るってこととか。
カマクラ:上から見るってどういうことですか?
藤巻:自分が空中に浮いて、ということ。自分は演奏してるんだけど、自分は空を飛んで、共演者それぞれの人が起こしている音楽を第三者的に見る、というか。それが上からってこと。上から目線ではないよ。
カマクラ:なるほど、自分は演奏してるから、なんというか、中身だけ上に行って、それが演奏者たちを見る、みたいな感じですかね。
藤巻:そう。自分が出したい音を出して、満足できるものでもないからね。
カマクラ:俯瞰して見て、全体が良くなっているかどうか。
藤巻:そういうことは考える。まあ難しいね。
カマクラ:自分で演奏してるわけだから、とても難しいですね・・・。
3.外山さんのレッスン
カマクラ:特に好きなドラマーがいたら、よかったら教えてほしいです。
藤巻:即興の人でかな?
カマクラ:いや、どういうドラマーでもいいです。
藤巻:ずっと好きなのは・・・好きっていうか、実際に習いに行ったこともある、外山明さん。
カマクラ:あ、習いに行ってらっしゃったんですね!
藤巻:うん、一瞬だけど。5ヶ月くらい。
カマクラ:どんなレッスンだったんですか?
藤巻:普通のレッスンではないよ。基本的には個人レッスンなんだけど、前に授業を受けた人がそのまま残って、次の人のレッスンを聞いてて、一緒にセッションとかもしたりして。だんだん増えていくみたいな。
カマクラ:へ〜!別に終わっても帰らなくていいんですね。面白いですね。
藤巻:基本的に、人のやってることを聞くっていうことを重要視してたと思う。
※ICP Orchestraを観て興奮している様子。ドラマーのHan Benninkと。
4.セノオGEEと高岡さん
カマクラ:今までの活動で、特に転機になったと感じていることや、大きな出会いだったと思う人がいたら教えてほしいです。
藤巻:そうだね、さっきの外山さんのレッスンを受けにいったのはとても大きかった。それと、前に灰汁っていうヒップホップユニットがあって、もう解散しちゃったんだけど、MCを担当していたセノオGEEって人。ちょっと年上の人で40幾つくらいの人なんだけど、その人もすごい・・・影響を受けたっていうか、すごい・・・心にざっくり刻まれる。やってる音楽もめちゃくちゃカッコイイんだけど、すごいいい経験になった。今、セノオGEEはソロでやってる。全然ドラマーじゃないんだけど、すごく影響受けた。
カマクラ:ふんふん、どんな影響なんでしょうか。
藤巻:音楽にも反映されてる気はする・・・という言い方になるかな。わかりづらいと思うけど。なんかね、許せないことは許せないっていう所とか。社会に対することとか。自分の言葉で、自分の身の上話を音楽にしたりする。あまりヒップホップにならなそうな気がするんだけど、ものすごくカッコイイ。
カマクラ:へー!
藤巻:マジでやばい。その人と、さっきも話に出た高岡大祐さん。
カマクラ:高岡さんとは最初どこで会ったんですか?
藤巻:俺は即興演奏好きだったから、よく高岡さんの演奏とかも、ひっそり聞きに行ったりしていて。
カマクラ:ひっそり・・・。
藤巻:全然、挨拶とかしないで。それで、下北沢のAPOLLOってライブハウスでインプロのジャムセッションをやってた時に、高岡さんが来てて。その時に一緒に演奏したりして、終わった時に高岡さんの方から連絡先を聞いてきてくれた。
カマクラ:それは嬉しいですね!
藤巻:高岡さんの人となりとかも、もともと知っていて。面白くない演奏とかすると・・・。一回惚れ込んだ人だと、そんな一回や二回つまらない演奏をしても、そこまで拒否はしないけど、一緒に演奏する必要ないなと感じたら、一切音出さなくなる。
カマクラ:すごいですね。素敵です!
藤巻:あの音の響きは他では絶対に味わえないから、一度は聴いた方がいい。
5.やりたいこと
カマクラ:いい基準とか、いい演奏者って藤巻さんの言葉だと、何なんでしょう?
藤巻:出音一発か二発くらいで、ああ、いいなって思う人とかいるね。やっぱグッとくるというか。その一発か二発の音でその人の背景を感じるというか、いろんなものを感じさせる人。
カマクラ:たしかに、背景感じますよね・・・。
藤巻:最近は特にそうなんだけど、できるだけ普通のドラムセットで、誰もやってないような演奏をしたいです。奇をてらうわけではなく。あまり人の真似はしたくないから。これまでは小物とかを持ってきて、それを使ったりもしていたけど、できるだけスティックとドラムセットだけで自分しか出せない音を出したい。
カマクラ:なるほど。
藤巻:ただ、今こう考えてるってことで、来年には変わってるかもしれないけど。即興演奏はできるだけ一生やっていきたい。
藤巻鉄郎
プロフィール :打楽器、ドラム奏者。 2014年にソロ音源「奏像」を制作。 現在は1tuba、2percussionの「歌女」、インストゥルメンタルバンド「GROUP」、シンガーソングライターの「入江陽」、「カマクラくん」のバンド編成での演奏をはじめ、個人での演奏活動も多い。