【第二回】春田幸江【柱殴ってみたり】

あるライブのチラシのイラストを見て春田さんのことを知りました。いい絵だなと思っていたら、次に見た春田さんの絵が全然違う人のような作品でびっくりしてしまいました。私カマクラくんも小さい頃から絵を描くのが好きだった、ということもあり、春田さんの話をいろいろと聞きたくなりました。

目次
  1. 発色がいい!
  2. エクストリーム
  3. 小学校
  4. 絵を見る
  5. 青春

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取材後に春田さんが描いてくれたイラスト

※9月8日(火) 渋谷某所、三軒茶屋デニーズでお話をお伺いしました。

1. 発色がいい!

カマクラ:小さい頃に絵を描いた思い出とか聞きたいです。

春田:そうですね、一番古い、なんか絵を描いたなという記憶は幼稚園ぐらいだと思うんですけど・・・。生まれは大阪で中一まで大阪にいたんですけど、

カマクラ:はい。

春田:それで大阪時代、幼稚園行ってた頃に、自宅の畳とか敷いてある和室の部屋で、低いちゃぶ台みたいのが置いてあるんですよ。そのちゃぶ台の下に体を滑り込ませて、潜り込むとコーティングされていない板が目の前にあるわけです。

カマクラ:ちゃぶ台の裏ってことですよね。

春田:ちゃぶ台の裏を見てて、あ、なんにも描いてない所があるぞ、って思って・・・なんだろう、どういう動きでそうなったかわからないんですけど。落書きとかは、お母さんから紙もらったりとかしてB5とかの紙に描いてたんだけど、自分がいつも描いてるサイズ・・・よりもはるかに大きな、自分の体くらいの大きさの板が・・・。

カマクラ:・・・。

春田:ムズムズして、そこにマジックで落書きをギューっと、寝そべって描いて。それが楽しかったのをよく覚えています。

カマクラ:へ〜。

春田:普通の話ですね。子供の頃ってイタズラ描きして怒られるじゃないですか。今仕事で絵を描く人に限らず子供の頃の体験としてよくあるかなと。

カマクラ:みんなやって怒られてると思います。

春田:とにかく今まで描いたことがない大きさ。壁とか・・・あ、だんだん思い出してきました。普通に壁とかに描いちゃうと、すぐ母親に見つかって怒られたりとかして。こんなところに描くんじゃないよって。でも大きいスペースに描きたいという欲望はどうもあったらしく、それでちゃぶ台の裏にこっそり隠れて描いた。

カマクラ:見えないですもんね。

春田:そうそう、実際しばらく気づかれなかった。あと絵を描くとき普通は自分が上で紙が下だけど、寝そべってるから上下逆さで、逆さでも描ける!宇宙みたい!とか、不思議を発見して、その時一人だった。という記憶。絵の話、割と子供時代の話になっちゃいますけど。

カマクラ:あ、聞きたいです。どんなどんな・・・。

春田:・・・えーと、大阪時代家自体がこう、金持ちじゃなくて、だからといって雨漏りしてるとかそこまで貧乏でもないんですけど、なんでもかんでも買ってもらえる家ではなくて。1977年生まれなんで、自分がちょうど小学校上がったぐらいが、アニメとかメチャやってて、テレビつけると。70年代とか60年代とかのアニメの再放送とか。

カマクラ:どんなアニメやってたんですか?

春田:巨人の星とか。黄金バットとか。ガンダムもうる星やつらも。とにかくいっぱい。リアルタイムで80年代アニメとかも毎日朝から晩までバンバンやってて。そういうアニメもあるし、漫画もちょうどジャンプが黄金期と呼ばれていた時代で、ドラゴンボールとか北斗の拳とか、普通に連載で読めるんですよ。

カマクラ:へ〜。

春田:アニメと漫画でうわ〜ってなって、そうなってくると見た絵とかまねして描いたりとかしたくなって、描きたいんですけど、学校のノート以外基本買ってもらえないんですよ。ほら、スケッチブックだよ画用紙だよ、みたいな感じじゃなくて、とりあえずあるものでやって、みたいな感じで。

カマクラ:はい。

春田:新聞とってるから、それにいつも広告が入ってるんですよ。チラシが。スーパーのチラシとか不動産のチラシとか。そういうのがごっそり入ってきて、探すと裏が何にも描いてないやつがあって。それをせっせと集めて、なんか自分なりの”何をしてもいい紙”みたいなのをためるわけです。それしかないから。

カマクラ:・・・。

春田:たまにうまいこといくと、自由帳とか買ってもらえたりするんですけど。それは特例で、基本そういうチラシの裏とかに。今言わない・・・いや言いますけどチラ裏ですね。

カマクラ:チラ裏・・・。チラシを見て、両面印刷だとガッカリするっていう感じですか?

春田:そうそれそれ。

カマクラ:僕もそうでした。

春田:ですよね、何だよこれっ!て。私、今回たぶん小学生時代に話が集約されちゃうかもしれないですけど、自分の基本的なものが小学生時代に形成されちゃってるので。その、めっちゃディティールの話ですけど、チラシをためて、そのチラシの紙の素材もいろいろあって。

カマクラ:そうですよね。

春田:さらっとしてるのと、ツルッツルのやつが・・・!

カマクラ:どっちが好きでした?

春田:さらっとしたやつがベストなんですけど。

カマクラ:ツルッツルのやつ、描きにくくないですか?

春田:そう、子供だから基本描くときに鉛筆で、ツルッツルのやつは芯のコナが引っかからないから描けなくて。さらさらのやつに鉛筆で描くっていうのを楽しんでいたんですけど、私がそうやって絵をわさわさ勝手に描いてるのを母親が発見して、たまに水性ペンとか買ってくれるようになって。カラーの。

カマクラ:あ〜、サインペンみたいなやつ。

春田:その水性ペンだと、さらさらのやつより、ツルッツルのやつのほうが・・・。

カマクラ:よく描けるんですか?

春田:・・・発色がいいんですよ。

カマクラ:はっしょく・・・、ははは。

春田:ははは・・・。

カマクラ:よく描けるというより、発色がいいんですね。

春田:違うな、と思って。染み込まないわ、コレ・・・。

カマクラ:ははは・・・!なんか目覚めですね。

春田:ははは・・・。そう、画材への。そういうことに興奮するっていうか、それだけですよ。

カマクラ:それは幸せですね・・・!

春田:いろいろ試してる時に何か発見する瞬間がものすごく楽しくて。あと、さらさらの紙だとだいたい紙が黄色とかピンクとかカラーで、ツルッツルのは白が多いんですよ。

カマクラ:ツルッツルはほぼ白だったような気がします。

春田:だから、やっぱり白い所にね。美しいわけです。

2. エクストリーム

春田:小学生男子は、エクストリームじゃないですか。

カマクラ:いや、わからないです。全然(笑)。

春田:ははは・・・。そうですね、大阪に住んでて家のそばに住んでる友達、一緒に集団登校する子たちがほとんど男の子ばっかりだったんです。兄弟も、弟がいるんですけど、一番よく遊んでいた隣の家の子も男の子兄弟で、周りに男の子が多かったんですよ。

カマクラ:ふんふん。

春田:で、家近いから遊ぶとか、それぐらいの理由で遊ぶじゃないですか。

カマクラ:そうですね。

春田:それで、男の子文化の方が普通っていうか、逆に小学校あがって、女の子がスカートとか履いてたり、小綺麗にしてるのを見てビックリするみたいな。なんかお姫様みたいな子がいるぞ、と思って。自分がそうじゃないことにコンプレックスを感じたり。基本男の子と遊んでました。テレビアニメも・・・。

カマクラ:ドラゴンボールとかおっしゃってましたもんね。

春田;そうそう、ドラゴンボールとか北斗の拳とか、キン肉マンとか。その時、少年漫画、少女漫画の区別もわかってないんですけど、だいたい少年漫画っぽいものばかり摂取してました。

カマクラ:そうなんですね。へ〜・・・。

春田:なんでしょう、住んでた地域が、工業地帯っぽいところっていうか。大阪の中心部から見て北のほう、淀川渡って向こう側で。家の近所に小さい町工場とか、住宅地に隣接してポコポコいっぱいあるみたいな所で、歩いているとなんか、工場の外に謎の鉄クズの山が背よりも高く積み上がってたりとか。子供だからそういうの手にとっては興味津々で、そういうのもあって結構家の近所で遊んだりとかする中で・・・。

カマクラ:はい。

春田:近所の男の子とワケのわからない遊びをよくしてた・・・。で、カマクラくんとお話するのでエクストリームな話をしたいなと思って。この話なんとなくした方がいいかなと思って。わかんないですけど・・・。

カマクラ:ぜひぜひ。

春田:家の近所に住んでる、ホッタ君って男の子がいて。ホッタ君ちの外に、ある日急にタンスとか机とか家具が並べられ始めて”何、引越しするの?”って聞いたら、”うんうん、俺んち建て替えんだよ”って言って。

カマクラ:建て替える・・・。

春田;”そうなんだ、いいね”とか言ってて。その荷物を運び終えたらしく、ホッタ家の旧邸はまだ建ってるんですけどすっからかんで、ホッタ君がそこに自分の友達を集めだして。急に。

カマクラ:え〜!

春田:空き家に。私も近所に住んでたから、来る?とか言われて。

カマクラ:誘われた!

春田:そうそう。これは何か始まるなと思って、血が騒ぎましたね。そしたら”俺んち、どうせ壊すからさ、みんなで先に壊そうぜ”って。

カマクラ:マジっすか〜。ヤバイなそいつ。ふふふ・・・。

春田:ははは・・・。

カマクラ:合理主義っていうか。理にかなってます。

春田:かなってるでしょ。ホントだ、と思って。

カマクラ:それでホントだって思って、春田さんも壊しに・・・行ったんですか?

春田:行った。

カマクラ:ははは・・・!

春田:そうなると皆、手に手に各々の破壊道具を・・・。ははは。

カマクラ;ははは・・・!正直っすね。

春田:私も父親が職人さんだったんで、家に大工道具みたいな、丸ノコとかドリルとか工具すごいあって、で、トンカチを片手に持って。軽くニヤっとした小学生たちが空き家へ・・・。たぶん、生活たいへんだったり家庭の事情いろいろある子だったりエクストリームな環境の子が普通によくいて。まわりの大人も、近所の悪ガキの動向はチェックして面倒みてたので、危ないこと見つかると怒られちゃうんで、まあ大人の目を盗みつつこっそり。トレーナーの下に隠したりして。

カマクラ:ホッタ君の旧邸へ。

春田:何食わぬ顔で。それで、子供なりの物理的な考え方っていうか、一階から先に壊すと上が落ちてきちゃうから、まず二階を壊そうということになって。

カマクラ;マジで壊す気だ。

春田:それで男子がやるぞ〜って。二階は和室が二間続いていて、真ん中の襖というか引き戸というか、ペラペラの仕切りがあって。その襖にドロップキックする人とか、障子を手当たり次第手刀で突いてる人とか、おもいおもいに壊し始めてめちゃめちゃ楽しくて。

カマクラ:楽しそう。

春田:私もこれ壊せるかな、って柱殴ってみたり。

カマクラ:みんな周りは男の子ですか?女の子は春田さんだけ?

春田:その旧ホッタ邸の件に関しては私だけですね。で、天井裏とかあがったりして、ボコボコにしてやろうぜ!みたいな。キャッキャいってすごい遊びまわってたら、ホッタ君の家の人が様子見に来ちゃって。それですぐバレて、すごい怒られるっていう。

カマクラ:ははは、怒られたのは全員ですか?

春田:まず、張本人ですね。ホッタ君自身が家の人に連行されちゃって。すばやい子はいつのまにかいなくて、逃げるタイミングのがす子はおこられて。これ俺たち良くないことしちゃったってショボンとして、なんとなくその・・・散るっていう。

カマクラ:え〜!

春田:なんとなく、みんな帰りました。わずか30分ぐらいで凄い楽しさと罪悪感、最後無言で解散、もうなんとも言えない気持ち。面白いっていうか、限界を知らないかんじというか・・・話したかったです。なぜかわからないですけども。エクストリームの言葉の意味ちゃんと調べたほうがいいような。

カマクラ:いや、春田さんの思ってるやつでいいと思います。

春田:どんくらい高い塀から飛び降りれるかとか、そういう感じ。やってました?

カマクラ:やってました、やってました。

春田:女の子の友達もできて、そっと遊んでみたりするんですけど、全く別な遊びなんですよ。どっちかっていうと、当時の私には男の子の遊びのほうが発見が多くて面白かった。絵とか漫画とか描いて、男の子にウケたっていうので、男子遊びに混ざっても女だからといって排斥されなかったのがありがたかった。まあなんとなく、居ていいよっていう緩い感じ。後ろのほうになんとなくいる。

3. 小学校

カマクラ:漫画を描いて見せていたんですよね。どういう漫画ですか?

春田:何年生かもうわかんないんですけど、4年生か5年生だったかな。ササキ君って男の子が漫画を描いてて。ササキ君は・・・ヨッシマンって呼ばれてたんですけど、ヨッシマンの漫画は面白いってなってて。

カマクラ:流行ってたんですね。

春田:クラスで好評連載中だったんです。私もヨッシマンの漫画を読ませてもらって、それにインスパイアされた漫画を自分も描き始めて。それを、クラスで誰かが漫画を描いたら読みたい人たちがいるから、見せてみたら、以外とウケたっていう感じ。

カマクラ:なるほど。

春田:オリジナルキャラクター作ったりとかはせずに。まずササキ君の漫画がクラスメイトが出てきて大暴れするみたいなので、あ〜おもしろいって思って。漫画の中だったら人殺していいんだ、みたいな。女の子達の集まりでは浮いていたんですが、友達になってくれた女の子がいて、その子と自分をキャラ化して、あとはクラスの男子とか、読んだ漫画のキャラクターとかがいっぱい出てくる漫画でした。ハイスクール奇面組とか好きだったんで、普通に奇面組の人が出てきてみんなで一緒にサッカーやったり殺人事件解決したりとか。

カマクラ:へ〜。

春田:思いついたことなんでも描いてました。人が熱唱してて間奏に入ったときに人間の分子がバラバラに崩壊してアメーバみたいになってでもサビで復活するギャグとか、ギャグ漫画。弟も出して弟にも読ませたり。しばらく描いてなかったら続きは?とか言われて嬉しくて、ホントにめっちゃ描いてたんですよ。毎日描いてた。基本学習ノートしか買ってもらえないんですけど、もう学習ノートに描けばいいんだと思って、漢字練習帳とか青い線入っちゃってますけど、ベース白いんで。そういうものをどんどん消費して描きまくってました。

カマクラ:楽しいですね。

春田:ノートを積み上げるとかなりの高さになる。描いては友達に見せ、めちゃくちゃ笑ってくれる、ツボの浅い子とかプルプルしてるのとか見るのがホントに嬉しくて。なんかよくわからないけど、すごい楽しいって。描いてる最中も面白いんですけど、人が見てくれた時に反応があるんで、それでかなりハマっていました。

カマクラ:小学校4年生くらいですね。

春田:そう、4年~6年の間。学校でもそうやってなんとか居場所があったんで。ベースは家の近所で遊んでるんですけど、でもみんな学年違ったりクラス違ったりするんで、学校行くとバラけるじゃないですか。

カマクラ:そうですね、関係なくなっちゃいますよね。

春田:そうそう、で、縄張りの外で果たして自分の居場所作れるのかっていうのは小学校通してのテーマだったと思うんですけど、なんとかかんとか。漫画でなんとかなった。

4. 絵を見る

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’15/09/19 – 荻窪ベルベットサン ケモノディスクライブ第五回 入江陽 『ピアノ弾き語りライブ〜誕生日のワガママ〜』のフライヤー用の絵。

※絵を見せていただきながらのお話です。

春田:なんか絵を描いたあとに、コピーとるの好きで。コピーとると、整理されるというか。生々しいものが薄い一層へだてた向こう側に行くというか。

カマクラ:僕もそれやったことあります。こんな素晴らしい絵じゃないけど。

春田:全部手描きなので修正液の後とか消えなかった鉛筆の線とか痕跡を残しつつ、出来上がったもの見ると、たまに怖いなこれ〜とか思ったり。以外と、印刷するとスッキリするので、怖めでもいいんじゃないかとか、研究中ですね。この絵の場合は1.5倍くらいに拡大したやつのほうが安心して見れました。

カマクラ:ふ〜ん・・・。安心して見れるってどういうことですか?

春田:個人的なものから遠のいた感じというか。拡大して紙に収まらなくて絵が切れた状態とか。なんて言えばいいのか。その辺ちょっと上手く言えないです。

カマクラ:絵によって、タッチとか全然違いますよね。

春田:固定できないんですよ。これはこれが正解だからこれ、みたいな感じで。振り分けて描くので、だからどんな絵を描いてるんですか?とかどんな漫画ですか?って言われると、ものすごい困るんです。全然説明できない。

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西條奈加『刑罰0号』最新回挿絵。(「読楽」2015年10月号掲載/徳間書店)

カマクラ:やばいなこれ。

春田:よかったよかった。連載小説の挿絵です。小説の世界の絵。これは、自分の力ではないというか、こんなに普段描けないので。ヤバイのできたなってこれはちょっと思いました。

カマクラ:これはショックが大きいです。

春田:今まで蓄積してきたものがいい形で出たなと思ったんです。奇跡的に。仕事の絵でちゃんとだせたんでよかったと。

カマクラ:素晴らしいですね。

春田:よかった!って嬉しいんですけど、そうなってていいのかな?と思います。奇跡の産物で。絵の学校行ってないから、どこかでたらめですけど、なんかできた!とかで。

カマクラ:我流ですね。

春田:超我流です。

カマクラ:我流でここまでできるんだ。

春田:できるできる。でも、トレーニング積んでないぶん整合性とれてる感じにするのに時間めちゃくちゃかかりました。描くのものすごく遅いんですよ。

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カマクラ:これは何ですか?

春田:これは週刊文春に大谷能生さんの記事が載ってたんですよ。それの模写。

カマクラ:え〜!記事の模写ですか?

春田:そう。全部一緒。ホント意味わかんないんですけどこういうことしちゃうんですよ。

カマクラ:やばいな〜これ。

春田:読めるでしょ。ちゃんと内容が。

カマクラ:”気鋭の批評家であり、近くニュー・アルバム『JAZZ ABSTRACTIONS』をリリースするなど”・・・。普通に記事だし。でも、絵ですね。こうなると文字も絵だし。

春田:子供の時とかも、単行本の表紙とかそのまま模写したりとかしてて。これいいなと思ったら模写するみたいな。原本とできた模写を並べて見比べて面白がったり、なんかそういう。遊びの一種です。

カマクラ:こういうのすごく共感します。面白い。ページ数も書いてあるし。しかもこの、下の広告まで・・・。

春田:健康チェックってところを模写しながら、私、頭大丈夫かな?とか思ったりして・・・そこで止めたっていう。

カマクラ:ははは・・・。

春田:笑ってもらえてありがたいです。これ系なかなか人にみてもらえる機会ないので。こういうものペロッとホームページに載せる意味あるのか私まだよく理解できてなくて、twitterだと流れて消えてっちゃうから、今ブログはじめて、意味あるものと並べてなんとなく見比べたりして。

カマクラ:普通は目的わからないですからね、模写する意味とか。なんで?ってやっぱり思うから。

春田:単純に暇だったからやった。

カマクラ:そうなんですよね。

春田:そうそう、なんか病的な何かってのは特になくて・・・あるんですかね?

カマクラ:いや、たぶん病的な何かとかはないと思います。

春田:救われる一言だ!

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ドキュメンタリー・ライヴハウスact.6 新春Special『ジョン・ケージメモリアルB.B.Q』

春田:ロゴだけです。ディレクションが吉田アミさんで、「あのジョン・ケージだ!とかビビらずアッホみたいなロゴ描いてください!」って感じで笑かされて、3分ぐらいで描きました。どうなるのか全然わかんなかったんですけども、吉田さんとデザイナーの竹田さんのセンスがすばらしくて、出来上がり見てこういうのがプロか!と感動して。ロゴだけ見るとふざけてる落書きですね。キレのいい感覚で素早くすくいとって上手に生かしてもらえて、ちゃんとした仕事の一部になって。一人でできることじゃないですね。勉強になったし、これすごく嬉しかったです。

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大谷能生7DAYS@荻窪ベルベットサンのDM

春田:2012年に上京して、はじめて使ってもらえた絵がこれです。7日間で21公演もあって、出演者の方めちゃくちゃたくさん。どうしようかと思って。生きてる人は興味を持って出向けば会えるので、今会えない人を描こうってして、朝の講義でテーマとして取り上げられる昔の作曲家の人達にして。あと、本業で一筋とおっている方々がカレー職人として日替わりで呼ばれてたんですよ。ステージでなくキッチンの方に。カレー7個描きたかったんですけど構成できなくて、大谷さんに配膳されるであろう1個にしたらおさまって。できた!と思って。ビジュアルもう一種類、店長が作った大谷さんの写真をコラージュして7人いるのがあって、ポップですごいカワイイんですよ。あれが陽でこっちが陰でやってることが逆で。大谷さんが主役なのにシルエットで描いて死者と物に焦点あてて、いいのか?と進めながら悩みまくってたので。あれがあってすごく安心できました。

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春田:絵の話は物がないとできないのでばばっと持ってきました。原画なかったり、なくしたり。こういう落書きとか使い終わったやつとか。どれか一つをとって、ああ、こういうのを描くんですねと言われると、そうなんですけどそういうわけじゃないというか。

カマクラ:いろんなタッチで描けるとまた苦労がありそうですね。

春田:描けるというか調節きかないんです。仕事、相手が欲しいものとどうやって摺り合せるかっていうのがあると仕事もらうようになってからわかって。描けるもの全部であたるしかない感じです。今は、あまり考えすぎず、えいってやるようにして。あと、自分さえよければって描き散らさず、冷静に描けたら、もう少しコクのあるものになるかもなとか。二十代半ばから上京直前まで絵をほぼ描けなくなってたので、経験値の低さに苦労してます。苦労の経験からいうと苦労じゃないか。うまくなりたい。

5. 青春

春田:今は楽しいです。さっき言ってたキャッキャ遊んでる感じと、全く同時にものすごく辛かったんで、大人になるまで生きれる気がしない、どうしようみたいな。今天国。

カマクラ:ふ〜ん・・・。

春田:キチガイな部分を、癒すために絵とか漫画とか描いてる部分、いやですけどあるなと。いやでも事実ですけどいやですけど。

カマクラ:うんうん、でもそういうところ、たくさんの人にあるんじゃないですかね?音楽で癒すとか。

春田:ありますね。音楽好きですし、漫画もアニメもそうだし。誰かが作ったものに癒されたり力をもらってます。音楽つくれないから、ミュージシャンの人達に憧れもあるし。みんなを楽しくする人達。みんな尊敬してます。

カマクラ:いいですね。

春田:ただ、尊敬してるだけだと情けなくなったり。

カマクラ:そんなこと思わなくていいんじゃないですか・・・(笑)。

春田:これ、インタビューというかカウンセリングですよね。無意識ダダ漏れでごめんなさい。(笑)

 

春田幸江 ( 絵 / 漫画 )

大 阪 府 出 身

愛 知 県 育 ち

東 京 都 在 住

http://harutasi.blog.fc2.com/

【第一回】剤電 (ザイデン)【祝】

物語を作り、それに合った音楽を作る、シンガーソングライターともトラックメイカーとも言えそうな異色音楽家。ザイデンさんのダークで何故か明るさも感じる音楽に興味を持ち、私カマクラくんはインタビューをすることにしました。

目次

  1. ザイデニズム
  2. 聞き始め
  3. やり始め
  4. 追いつかない
  5. 千葉の団地・日本の団地
  6. 団地とは?
  7. これから

※2015年8月9日、新大久保にてお話を伺いました。

剤電 (ザイデン)さんとは・・・御本人による自己紹介:1人でごちゃごちゃした音楽を作ったり、バンドをやったり、即興したり、サントラ作ったりしています。BMIが上がりません。

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1. ザイデニズム

ザイデン:ゲームすごい好きでした。クーロンズゲートっていうゲームが超好きで・・・。クーロンズゲートはかなり、ザイデニズムがあります。

カマクラ:ザイデニズム・・・自分で言うか〜!

ザイデン:ザイデニズムです。

カマクラ:ザイデニズム。

ザイデン:たぶん、見てみればわかります、クーロンズゲート・・・。

2. 聞き始め

ザイデン:もともと映画が好きでした。祖父が、隠居したあとに唯一の楽しみだったのがWOWOWで映画を録ることだったんです。仕事辞めてから、ずっと家に引きこもってビデオを録画してたんですよ。それで、毎週じいちゃんの家に行ってたんですけど、毎回見せてくれたんです。毎週、ジャンル問わずに。

カマクラ:それって何歳くらいの時ですか?

ザイデン:3歳くらいですね。3歳くらいから、17歳くらいの時までほとんど毎週行ってたんで。毎回違う映画を見せてくれたというか、見せられたというか。これ、見ない?とか言うわけでもなく、勝手に流すんですよ。

カマクラ:なるほど。

ザイデン:それを、必然的に見ることになって。じいちゃんが死んでから、そのベータのビデオテープがすごい余っちゃって。ベータってもう見れないんですよね。

カマクラ:VHSの前のやつですか?

ザイデン:そうです。今もじいちゃん家の地下に大量のベータが眠っていて。すごいことになってて・・・。すごいコレクション。ただ、今はベータの再生機がほとんど手に入らないので・・・。

カマクラ:見たくても見れない感じ。

ザイデン:そう、見れなくて。とりあえず、それの影響がすごいです。映画は小さい時から好きで。特に、ディズニーですね。ディズニーのアニメとか見せられて。

カマクラ:まあ、見せられたというか、見てるから見ようよ、という感じですか?

ザイデン:そうですね。「ミッキーとドナルド」って番組をWOWOWでやってて、それを毎週録画して見せてくれたりもしました。

カマクラ:それ!見たことあります。俺もそれ、WOWOWで見てました。結構昔のやつですよね。

ザイデン:そう、たまに最近のもやるんです。短編を何個かやるっていう。

カマクラ:ザイデンさんの音楽、言われみるとディズニーっぽさすごくあるな、と思います。

ザイデン:はい。僕の曲、結構ディズニーっぽいと自分で思ってます。小松成彰さん(音楽家。横浜中華街スピリチュアル占いとパワーアクセサリーのお店『Maila』に所属している。KING KONG JAPANという別名で曲を作ったり、エレファントノイズカシマシというバンドでザイデンとも共演中)ってご存知ですか?

カマクラ:はい!

ザイデン:小松さんに同じ話をしたら、わかる!超ディズニーっぽいよね!って言われて。ただ、ディズニーが好きだったって言うと、結構みんな”えー!”って感じになるんですけど。

カマクラ:ディズニーの楽しい感じが、根本に流れてる感じがしました。

ザイデン:あとは、ターミネーターとか。レーザーディスクがあったんですよ。ターミネーター2とか、プレデターとか・・・ああいうの今でも好きですね。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:あと、雨宮慶太さんっていう特撮の監督がいて、その人がやってたゼイラムっていう映画。2まであって、4歳くらいの時にじいちゃんに見せられて、それが未だに残ってます。かなり、核というか、そこで使われてる音楽もめちゃめちゃカッコよくて。ビジュアルもすごく独特で、かなり影響受けています。

カマクラ:4歳くらいの時に見たゼイラム。4歳って早いな・・・。

ザイデン:あと、サントラとかめちゃ聞いてました。TSUTAYAで借りたりして、SFものとか。小中学生ころですね。あと、その頃ちょうど癒しが流行っていて・・・。

カマクラ:癒し!流行りましたね。

ザイデン:フィールっていう、ヒーリングミュージック、癒しを得られる音楽のオムニバスがありました。それを親が買ってきていて、よく聞いていました。アディエマスって知ってます?

カマクラ:いや、知らないです。教えてください。

ザイデン:ソフトマシーンってバンドをやっていたカール・ジェンキンスって人がやっていた合唱団みたいなやつで。それとか、エニグマっていう・・・。

カマクラ:エニグマ?

ザイデン:はい。ドイツのグレゴリオ聖歌と、ダンスミュージックを合わせたグループとか・・・。あと、姫神、ご存知ですか?

カマクラ:いや、わからないです。でもどんどん話してほしいです。

ザイデン:ほんとですか?姫神っていう、もう死んじゃったんですけど。あと、ポルトガルのマドレデウスっていうグループ、かなり入ってます。マドレウス超カッコいいんで、ほんとにオススメです。

カマクラ:ふーん、マドレデウス・・。ありがとうございます。

ザイデン:ポップスと、ポルトガルの伝統音楽のファドっていうのを合わせたバンドで、ホントに泣きそうになります。結構僕、そういうヨーロッパの民謡とか好きで。ちょっとこれはニワカと思ってるんですけど。プログレとかも好きです。

カマクラ:どれもホントに好きそうだ・・・。

ザイデン:音楽は、サントラとヒーリングミュージックと、という感じです。いわゆるバンドとかを聞き始めたのは、中三くらいかな・・・。パンクが好きになってしまいまして。

カマクラ:パンクネスはザイデンさんからひしひしと感じます。

ザイデン:超ありますね。70年代のパンクが好きで、そこからいろいろTSUTAYAとかで聞き始めました。

3. やり始め

カマクラ:楽器は最初何から始めたのですか?

ザイデン:ベースです(食べ始めたパスタに粉チーズを大量にかける)。

カマクラ:わ、めっちゃかける!!

ザイデン:かけ過ぎました。パンクはまって、そっからニューウェーブとか聞き始めて。ジャパンっていうイギリスのバンド、今でも大好きなんですけど、そのベースをやっててもう死んじゃったミック・カーンってやつが、フレットレスベースを使ってました。それを聞いてなんか、すごい衝撃を受けて・・・。めっちゃ凄い音だしてる、と。ミック・カーンに憧れてベースを始めたって人が日本に大量にいると思うんですけど、僕もそういう感じでした。

カマクラ:ふんふん・・・。

ザイデン:それで、高校の時に軽音楽部に入って、学校一のブスと、太陽族のコピバン組まされたんですけど・・・。学校一のブスというのがすごい重要で。

カマクラ:学校一なんだ・・。

ザイデン:珍獣って呼ばれてたその人と、学年で唯一のゲイと、一緒にバンドを組まされて。

カマクラ:組まされてってどういうことですか?

ザイデン:強制的に組まされちゃうんですよ、軽音楽部。太陽族って青春パンクのコピバン組まされて、速攻でやめて、そこからはバンド全然やらなかったです。22歳になるまで、バンドやってないです。

カマクラ:22っていうと、2、3年前ですね!かなり最近まで。

ザイデン:そこからはずっと、一人で家でベースの練習してました。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:高校時代の思い出が、ベースの練習してたことと、BOOKOFFにいたことしかない。何にもしてませんでした。大学入っても似た感じです。大学入ってから、一瞬組んだんですけどすぐ解散ていうか、ダメになっちゃって。

カマクラ:・・・。

ザイデン:で、大学が映画とかの学校だったんですけど、そこでバンドはやってないけど、一応音楽やってるんだったら、ということで友達の自主製作映画のサントラをずっと作ってて。僕がサントラとか舞台の音楽とか作ったりしてるのはそこが出発点です。

カマクラ:なるほど。

ザイデン:20歳くらいのころからずっと頼まれて作ってたんです。だから、音楽を作り始めた原点は、人のサントラです。バンドもやってなかったし。ちなみに初めて作ったサントラは、特撮です。

カマクラ:特撮・・・?

ザイデン:うちの大学に特撮部があって、そこの自主製作映画のサントラです。ちょうどそのころヒップホップにはまってて、サントラも全部そんな感じになって作り直されたりしましたけど。そこから、ずっとサントラを作っています。2011年、大学四年の時は超やばくて、卒論書けないくらいサントラ作ってました。それで、卒業できなかったんですけど・・・。

カマクラ:中退ってことですか?

ザイデン:いえ、6年生までいて、多分卒業はしてると思います。証書はもらってなくて・・・。ずっとサントラでした。あとは舞台とか。失礼なんですけど、超劣化版三谷幸喜みたいな舞台の音楽作ったりしてました。

カマクラ:なるほど、自分で作り始めたというより、まず注文が来て、それでやり始めたっていう感じだ。

ザイデン:受け身です。綾波レイです、綾波レイ系です。

カマクラ:ははは・・・。ただ、ザイデンさんはパッと見、とても受け身には見えないので面白いです。どんどん自分から作ってるように見えるけど、もともとは頼まれて作ってる。

ザイデン:頼まれないと、作れなくて・・・。そうやってずっとサントラ作ってたんですけど、仲よかった先生が唯一大学にいて、現代音楽とか教えてもらったりするんですど、その人が、金にならない学生の自主制作映画のサントラとかやっても楽しくないし疲れちゃうだけだから、もっと自分の音楽やったほうがいいよ、と言ってくれて。ザイデンっていうソロをはじめたのは、その一言からだったんです。

カマクラ:なるほど・・・。

ザイデン:その先生の言葉を聞いて、やっと一人で作り始めて・・・それも発表とか形になったのは2012年ぐらいで、この年はちょうど大学留年した年だったんですけど、初めてちゃんとバンド組んだりしました。そこから今に至る感じです。

カマクラ:大学留年した年が、制作のキーポイントだったんですね。

ザイデン:そうです、そこからすべてぶち上がっていった。大学4年間、何もいいことありませんでした。

カマクラ:何も・・・。別にサークルに入っていたわけでは、

ザイデン:ないです。他大のサークルとは仲よかったんですけど。

4. 追いつかない

カマクラ:自分の作品を一個まず紹介するとしたら・・・って作品はありますか?作品量すごく多いので。

ザイデン:ないですね。

カマクラ:ないんだ・・・!

ザイデン:最新のザイデンが最高の・・・。

カマクラ:そういう感じなんだ。

ザイデン:・・・ちょっと語弊ありました。なんていうか、主観と客観が全然違うので。主観で言うと、そうなんですけど・・・今が一番というか、今やってることにしか興味がないんですけど、客観で見ちゃうと、やっぱり代表作を聞いてほしいというのがあります。こういうのが好きな人には、これ、みたいな感じで。

カマクラ:なるほどね・・・。

ザイデン:歌モノとかが好きだったらこれ、とか。ノイズっぽいの好きだったらこれ、とか。

カマクラ:そしたら、聞いてくれる人に合わせて作品を提示するという感じ?

ザイデン:そうですね。いっぱいアップする人の難点はやっぱり、ここの部分ですね。きりがないというか、追いつかないというか。

カマクラ:追いつかない、というと?

ザイデン:聞く方が。ただ、名刺っぽいものをつくろうと思いながら、結局それも名刺っぽいものにならない気がするんです。なんというか、俺はこれですっていうのは、実はあてにならないというか、人間ってすごい不安定だと思うし・・・。

カマクラ:その、あてにならないっていうのはどういうことですか?

ザイデン:なんか、自分で思ってる自分と、他人が思ってる自分は違うし、自分で思ってる自分が本当なのかっていうとそれも違うし、他人のそれも違うし・・・あまりにもとりとめのないものなので・・・。たとえば、戦略として、間口を広げるために俺はこれですみたいな感じで作るならいいと思うんですけど。

カマクラ:うーん、よくわかってないかも。

ザイデン:結構僕が、打算的というか、あまり情緒がない人というか・・・。言いたいことも特にないし、メッセージみたいなものも。歌詞とかもすごい、作るんですけど、それも言いたいことがあるというよりは、脚本を書くみたいな感じで、この話にはこれ、みたいな感じでやってて。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:だから人から作品数多いですね、って言われても、僕としては全然少ないんですよ。まだまだ。

カマクラ:作ってる側は、そうなんですよねきっと。さっき追いつかないって言ってたけど、きっとアイデアがどんどん湧き上がって、手の方が追いつかないってこともあるんじゃないですか?

ザイデン:そうですね。あと、一人でやってるのとバンドは違うし・・・。即興とかするときもまた違う。ただ、違うっていっても繋がってはいるんですけどね。

5. 千葉の団地・日本の団地

ザイデン:神聖かまってちゃん、とても好きでした。今はそこまで好きじゃないけど・・・。ファーストとかセカンド、今でも聞くと泣いちゃいます。

カマクラ:なんとなく、かまってちゃんぽさもザイデンさんありますね。

ザイデン:絶対ありますね。かまってちゃん出てきたときに、ついに日本のリアルタイムで聞ける音楽がでてきた、と思って。俺たちのセックスピストルズだ、とか思ったりして。ただ、今はそんな好きじゃないですけど。

カマクラ:今、なんでそんなに好きじゃないんですか?

ザイデン:たぶん、ちばぎんってベースの人が上手くなっちゃったからだと思います。それと反比例するかのように。ちばぎんってもともとギターで、ギターの人が片手間で考えるベースだったんですよね。だからフレーズとかみんな一緒で・・・でも最近本当に上手くなって、かっこよくなっちゃって。でもそれで、あのちばぎんのベースがかまってちゃんの良さだったんだ、みたいなことに気づいたように思います。

カマクラ:なんで、ベースが上手くなって、つまらなくなったと感じたんでしょう?

ザイデン:カッチリしちゃったっていう。なんていうか、ベースがしっかりしてないと、音が浮いた感じになるんですよ。大抵はベース・ドラムがしっかりしてて、上物が変なのがカッコイイみたいな定説があって。だからジョイ・ディヴィジョンとかニューオーダーとか、ドラムは本当にしっかりしててベースもそんなにリズム外してないんですけど、かまってちゃんはドラムはタイトなんですけど、ちばぎんのベースだけ・・・。なんかフワフワしていて、何でなのかなと思ってたんですけど、それが独特のローファイ感というか、千葉の団地の駅に吐かれているゲロみたいな感じが、それによってもたらされていたんですよ、たぶん。

カマクラ:団地・・・。

ザイデン:ちょっと喉につかえる感じ。かまってちゃんは、カッチリしたバンドというより、存在がおもしろいというか、現象がおもしろいという感じがします。あの4人でやってるというのが。の子という圧倒的な人がいて、それに3人がノイズ的に存在してるのがいいと思います。

カマクラ:別に、いいのをみたいわけでは、ないということなんでしょうか。

ザイデン:そうっすね、曲はいいと思うんですけど、ただ全体像として・・・良質なものに飽きはじめているっていうか。今、スカムが流行ってるじゃないですか。

カマクラ:スカムって何ですか?

ザイデン:ダメっていうか、クソっていう感じで。スカムミュージックというのがあって、ヘタウマとはちがうんですね、本当にどうしようもない。たとえばハーフジャパニーズって知ってます?

カマクラ:いや、知らないです。

ザイデン:ハーフジャパニーズっていう、アメリカのワケわかんない兄弟がいて、その二人一切楽器できないんですけど、演奏できないギターと、演奏できないドラムで、音源作ったんです。たしか30曲2枚組でつくったり、今は普通に即興のとことかでやってますね。あとは、ストックハウンゼン&ウォークマンっていう、しょうもないコラージュをかけ続ける人たちとか・・・。そういうダメなものみたいなのが流行っているんですよね。

カマクラ:なるほど・・・。

ザイデン:スカムパークってイベントもあるくらいで、ロフトとかで。純粋にいいものを求める人はインディーロックとかシティーポップとかにいくのかなと思います。

カマクラ:かまってちゃんはそのスカムとは違うんですか?

ザイデン:微妙ですね。アルバムとしてプロデュースされてできているんで・・・。の子はどれだけ作ってるのか天然なのかわからなんですけど、の子の曲というより、存在がスカムなんだと思います。ああいう、千葉でお父さんと二人で暮らしていて、NHKで派手に演奏したり、ニコ生とかやっちゃう、存在がスカムっていう感じ。音楽じゃなく。

カマクラ:音楽ではなく・・・。

ザイデン:でも、音とかもけっこう、実は・・・。かまってちゃん好きじゃない友達とかは、音楽的に面白いところが一個もないとか、新しいとところが一個もないとか言うんですけど。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:でも、結構そうは思わなくて、ボイスチェンジャーをキーボードに置き変えて弾いたり、ディレイやリバーブの感じとか、面白いと思うんですよ。

カマクラ:ちょっとシューゲイズっぽい・・・。

ザイデン:そう、いいなと思っていて、あのサイケ感みたいな・・・。ほんと、団地っぽい。日本の団地っぽい。アメリカ人には、感覚的に民族的にできないんじゃないかって感じなんですけど・・・。あのリバーブ感っていうか。土着。土着的なんですよ。

カマクラ:うんうん・・・。

ザイデン:土着っていっても、民謡とかじゃないんですよ。ウチらの子供の頃の団地とか、家の風景とか・・・。

6. 団地とは?

カマクラ:さっきから団地、団地って結構でてきてるんですけど、団地のことはたぶん、あまりわかってないと思います・・・。団地ってだから、普通の市営住宅みたいな所のことですよね。

ザイデン:そうですね、ボロボロの、古いでっかいマンションみたいなのが並んでる。

カマクラ:その感じの音楽、ということですか?全然わからない。すごく聞きたいです。しかも、それがザイデンさんの作ってる音楽に繋がってる気がするし。

ザイデン:繋がってますね。ねこぢるって漫画家知ってますか?

カマクラ:いえ、知らないです。

ザイデン:そのねこぢるっぽさというか・・・。

カマクラ:どんな感じですか?

ザイデン:小さい頃に見た残酷な光景みたいな。たとえば、アリが大きい虫を食べていたり・・・。

カマクラ:全然わからない!

ザイデン:帰ってきたら父さんが超機嫌悪かったり・・・。

カマクラ:自分が帰ってきたら?

ザイデン:いや、父さんが帰ってきたら。あとは、近所のおばあちゃんが発狂して死んじゃったりとか・・・。そういうちっちゃい頃に見た、”えっ”って感じみたいなのを僕は・・・好きというか、とりつかれているって言ったらおかしいかもしれないけど。懐かしさじゃないですけど、そういうのすごく興味がありますね。

カマクラ:へえ・・・。

ザイデン:神聖かまってちゃんもそういうところ、すごく感じるんですよね。日本のゴシックというか。日本のそういう、昔の原風景っていうか。

カマクラ:ゴシック。

ザイデン:ゴスって言葉、知ってます?

カマクラ:いや、わかんないですね。

ザイデン:たぶんサブカルチャーの一種なんですけど、ゴスっていうカルチャーがあって、なんていうかビジュアル系の元祖とも言われていて。アメリカとかイギリスで、目を真っ黒にして、格好も真っ黒で演奏するバンドがいて、80年代のイギリスとか。それがゴシックロックって言われてたんですけど、今だとマリリンマンソンとかが受け継いでる感じ。ゴシックっていうジャンルがあって、それとは別に、もっと本来の意味で、よくない昔見た風景とかの意味があって・・・。

カマクラ:ゴシックはさっき言ってたゴス、っぽいということなんですか?

ザイデン:いや、それとはまた別で、黒塗りのゴスとは別で、いろんな意味があるんです。

カマクラ:ゴシックは、たとえばどんな意味があるんですか?

ザイデン:サブカルチャーとしての、ゴスっていうのと、

カマクラ:それは黒塗り?

ザイデン:そう真っ黒な、黒塗り。今でもそういうネーチャンとかいますよね。ただそれはビジュアル系だったりするので、それの源流がゴスなんです。ビジュアル系っていうのは音楽的にはメタルとか通ってるんですけど、それ以前にゴスとか、ポジティブパンクというのがあってそれを源流にしてるんです。

カマクラ:ゴスロリのゴス?

ザイデン:そうですね。耽美っぽい感じ。ビジュアル系はゴスとかが源流で、メタルとかと合わせて日本で生まれたもので。いま、ビジュアル系っぽいのとゴスのファッションがごっちゃになってて・・・初期のビジュアル系に近いのかな・・・。

カマクラ:うーん・・・。

ザイデン:ゴシックなんですけど、音楽ジャンルとしてあるし、そこまで詳しくはないですけど、ゴシック文学っていうのもあるんです。エドガー・アラン・ポーとか。古い怪奇、アメリカのじめっとした感じの怪奇。みたいな感じのと、悪いものにひかれること、怪奇なものにひかれること、という意味があったように思います。影の部分です。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:僕、団地って言ったんですけどいわゆる子供の時って輝いてるじゃないですか。そうじゃない人もいるかもしれないけど、無邪気じゃないですか。幼稚園行ったりとか、プール行ったりとか、友達と遊んだりとか、キャッキャしてる中で、その横で、アリを遊び半分で殺したりとか、火遊びで、爆竹でトカゲ殺しちゃったとか、そういうのも、ある意味ゴシックだなと思います。

カマクラ:うんうん・・・。

ザイデン:そういうゴシック感を、僕はたぶん好きなんです。ゴシックロックが好きな友達とこういう話をしていて、それもゴシックの一種だよねって言ってたんです。それを自分の音楽で、やりたいというか、結構強いのかなって思ってます。

7. 狛江

カマクラ:団地ネタは必須ですね。

ザイデン:そうかもですね、団地・・・汚い団地ありますよね。

カマクラ:どこ出身ですか?

ザイデン:狛江ってとこです。東京でいうところの、すごい田舎なんですけど。狛江市です。

カマクラ:どんな所なんですか?

ザイデン:ちょっと変な感じの町なんです。ちょっと暗い、ちょっと影があるっていうか・・・。栄えてはいるんだけどちょっとジメッとした感じのところです。狛江で育ったのは大きいかもしれません。

カマクラ:その狛江の、よく覚えてることとか聞かせてください。

ザイデン:すごいいっぱいありますね。まあ団地っていうのはただの象徴的なもので・・・家の近くに◯◯◯っていう団体があって、それが慈善団体なのかわからないんですけど、すごいニコニコしたお姉さんお兄さんが古いアパートの一室を借りてやってて・・・。

カマクラ:それって何歳くらいの時ですか?

ザイデン:小学校くらいの時ですね。小学校帰りの子とかを誘って、僕もその◯◯◯の前とか通ると”遊んでいきなさいよ”みたいなこと言われてたんですよ。けっこう、そこで遊んでる子もいたんですけど、僕の友達とか親とかではちょっとあそこは行かないほうがいい、みたいなことになってて。とにかくそのお姉さんたちがテンション高いんですよ。

カマクラ:うんうん・・・。

ザイデン:で、今から考えてみると普段その人たちがどうやって生活していたのか全然わからなくて。とにかくその古いアパートの一室を借りて・・・子供を遊ばせていたのかな、とても不気味で・・・っていうのとか。

カマクラ:なんか怖いですね。

ザイデン:あと、モリくんって友達がいたんですけど、そのモリくんの家庭環境が未だに謎で・・・そのモリくんの家族は林の中にある駐車場に住んでたんですよ。駐車場に、土管とか廃車とかがいっぱい重なってるところに小屋があって、そこにモリくんの家族が住んでたんです。

カマクラ:え〜!!

ザイデン:親に、なんでモリくんあそこに住んでるの?って聞いてもみんな口を閉ざしていて。家族構成はモリくんとお姉ちゃんと、お父さんとお母さんだったんですけど。

カマクラ:4人。

ザイデン:そう、モリくんの家に遊びに行った時も、家の中がワケわかんない感じになってて、迷路状態。小屋がけっこう広くて、一階だけなんですけど結構横に広くて。ジャングルって呼ばれてる部屋があって、そこを開けると布団が敷き詰められてて鉄パイプがめっちゃ刺さってるんですよ。

カマクラ:え??

ザイデン:真っ暗で天井から鉄パイプが。ここジャングルだからって言って。鉄パイプっていうか土管ですかね、全く日が差さないところで、ここで一人で探検ごっこしてるんだよ、みたいなこと言ってました。

カマクラ:小学校の友達ですか?

ザイデン:そう、モリくんっていう。で、一応テレビとかあったんですけど、本当家の中が入り組んでいて・・・、結局途中で転校しちゃうんですよ。お姉ちゃんが超やばくて、超ヤンキー。不良でよく街であばれてて、モリくんは実はお母さんの息子ではなくて、お母さんはお姉ちゃんばかり可愛がっていたから、モリくんは噂では、遠い親戚のところに預けられた、みたいなことを聞きました。そのモリくんの家ってめっちゃ猫がいて、猫と住んでるみたいな感じで、お父さんはずっと立ち尽くしてる。何して生きてる人なのかわからない。とりあえずモリくんの家にいくと、お父さんが廃車の中で立ち尽くしてる。今から思うと、廃車を処理していたのかな、と思います。

カマクラ:廃車・・・?

ザイデン:車ですね。

カマクラ:駐車場があって、小屋があるじゃないですか。その小屋の外に廃車があるんですか?

ザイデン:あ、駐車場って言ったんですけど、正確には雑木林の中に広場があって、そこにスクラップになった車がめっちゃあるんです。その真ん中にモリくんの家があって。未だによくわかんなくて、そこらへんの雑木林ってすごく露出狂がでるって話題になってたんですよ。かなり危ない地区だったんです。治安がよくないとこで・・・。小中狛江だったんですけど、様子がおかしいやつがなんだかいっぱいいて、壁に向かって話しかけてる人とか・・・。

カマクラ:・・・。

ザイデン:僕は狛江の第一中学校だったんですけど、第一中学校って五小と二小と、七小からの子供が来てるんですけど、二小が団地の子供達で、その二小の子供達はみんなおかしいやつでした。全員おかしくて、不良は超悪いし、問題起こすやつとか、少年院入れられるやつはみんな二小なんですよ。で、おとなしいやつでも頭おかしかったり、超ロリコンだったり、障害のある子だったり、二小区域は本当にそんな感じで・・・。

カマクラ:それは中学校で出会った人たち。

ザイデン:そう、二小区域って密集団地なんですけど、そこって団地感と結びつきが強くて、二小・・・第二小学校に他の地域から子供が来ると親含めて村八分にされるんですよ。引っ越してきたりとか、あとは、団地じゃなくても地域区分的に二小に行かなきゃいけなくなった子供とか。

カマクラ:すげえな・・・。

ザイデン:二小の運動会ってすごくて、親が超酒飲んで暴れるんですよ。二小はそういう、独特の村みたいな。僕は五小でした。五小が一番おとなしかったんですよ。で、五小の子供は大抵四中に行くんですけど、僕は一中になっちゃって・・・。

カマクラ:それで二小のやつらと鉢合わせた。

ザイデン:それで七人くらい、いや十人くらい、五小から一中に行ったんですけど、三人くらい不登校になりました。

カマクラ:ははは・・・。

ザイデン:環境に適応できなくて。

カマクラ:僕も中学校で他の校区の人と鉢合わせて、ショックっだったこと今でも覚えてます。そういうの忘れないですよね。

ザイデン:やっぱり感受性が豊かな時期で・・・。

カマクラ:なんか人種が違う気がしちゃうんですよ。

ザイデン:そうそう、やっぱそれって、大人になっても人種が違うなっていうのはあるじゃないですか。クラブで踊ってるやつらとか。話題とか、笑いのツボとか全然違いますよね。

カマクラ:そうですね、ノリとか、言葉遣いも違いますよね。

ザイデン:特に中学校とか、子供の頃の体験ってみんな引きずりますよね。楽しかった・・・いや、楽しくない中学校というか。

カマクラ:ははは・・・。

ザイデン:そういうのおくっちゃうんですよね。だから、今クラブとかでブイブイ言わせてたり、イケイケな音楽やってたり、今は溌剌としてる人が、昔の話を聞くとすごく暗かったりするんですよ。だから、反動でそうなってるのかなと。以外とそういうところで抑圧されたりしてるんですよね。反動で大学デビューしたり、クラブでブイブイ言わせたりする人と、暗いままで行く人とに分かれる気がします。

カマクラ:暗いままでいくやつ・・・。

ザイデン:それは持って生まれた素質なんですかね。僕は結構ブイブイ言わせたいんですよ。

カマクラ:そりゃだいたいはブイブイ言わせたいと思います。

ザイデン:でもやっぱ、暗いままでいく・・・憎しみだけを背負って生きていく人ってのもいるから、それはやっぱり素質っていうか、なんなんですかね。やっぱ持って生まれた、違いなのかもしれないですね。バンドをやってる人とか、あんまりブイブイ言わない人が結構いる気がして・・・結構暗いままでいきますね。憎しみを背負って・・・。悲しみを背負ったまま。

8. これから

カマクラ:これから音楽で、こういうの作りたい、とかあります?常に作っていると、逆にないんじゃないですか?

ザイデン:やりたいことがありすぎて・・・。うーん、音楽でなくてもよければ、金が欲しい。

カマクラ:金が欲しい。ははは・・・!

ザイデン:高所得になりたいです。

カマクラ:それツイッターで言ってましたね。

ザイデン:金が欲しいというか、そういう人種と知り合ってみたいです。すごい興味があるというか。クラブミュージックとか、トラック作ってる人って本当にみんな金あるし、仕事もちゃんとしてるし・・・。めっちゃ金回りいいし、酒も飲むし、そういうカルチャーにすごい興味があって。ぶち上がってるというか。あと、力のある人と知り合いたい。

カマクラ:そんなこと言うとは思わなかった・・・。

ザイデン:去年までどうしても、自分の周りに鬱気味というか、メンヘラ的な人が多くて今年の前半くらいにそういう人たちと袂を分かつ機会が多かったんです。

カマクラ:関わる人間を変えていきたいということですか?

ザイデン:そうですね、大雑把に言うと・・・変わっていくんです。結構、舞台の音楽作ってた時は、ずっと変わらない人が多かったように思います。何も取り入れず、曲げない。それがきつくて、もう一緒にはやりたくないな・・・と思ってしまいました。

カマクラ:なるほど、変わっていく・・・。

ザイデン:そう、あとはあまり音楽のことをグチャグチャ言っててもしょうがないと言うか、グチャグチャ言う力があるなら・・・。

カマクラ:今日は喋ってくれて本当にありがとうございました。それなのに喋ってくれたという感じ。

ザイデン:いえ、グチャグチャというのは今日のようなことではなくて、文句というか、周りの人間への批難のことで、そういうエネルギーが無駄だなって思うんです。自分で何かしたほうがいい。嫌いな人たちや、好きじゃないシーンの人たちもビックリするようなことをしたいなと思います。ポジティブな方向に。

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