【第五回】中田粥【声を大にして・・・】

初めて試聴室へ遊びに行った折、強烈なノイズ音とともに、にこやかな表情で緑の基盤をいじくる粥さんの姿を見てしまいました。何だこれは一体!と大ショック・・・。このインタビューでは触れられませんでしたが、もともとクラシックピアノを弾いていたという粥さん。固定観念にとらわれない、自由な空気をいつも感じる大好きなミュージシャンです・・・。

目次
  1. 最近
  2. やる時は
  3. やりたくなったら・・・
  4. リハ終わり
  5. 写真
  6. バグシンセは

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※2015年9月14日千駄木にてお話を伺いました。

1.最近

カマクラ:バグシンセ (シンセサイザーを分解して、その中身を直接触ってショートさせたりして音を出す楽器。緑色の基盤がむき出しになっているのが特徴的) の調子は最近どうですか?

:バグシンセ調子いいっすね。

カマクラ:いいですね。

:ほっといても音がでますから・・・。ははは。

カマクラ:え〜!ははは!

:おれがいなくても音が出る。まあ最近(2015年9月現在)のことで言うと、大阪に引っ越します。

 

カマクラ:大阪に行くと、いろいろ変わりますよね。生活とか、関わる人とか。

:向こうに行っても、やりたいこととかは特に変わらないです。何ていうか、全体的な底上げって感じかも。

カマクラ:全体的な底上げ・・・。即興やノイズっていう音楽と、歌物っていうのは違うものなんですかね。全体的な底上げに、歌物も入っているのかな・・・とか思いました。

:うーん、即興と歌物はどこが違うと思う?

カマクラ:いや、それがなかなかわからなくて・・・。

:何が違うのか。

カマクラ:音はどっちもこだわってて・・・。

:それはそうだね・・・。一応、うっすらとしたシーンみたいなものが見える気がして。きっとカマクラくんも、カマクラくんって歌物のバンドが、何かしらのうっすらとしたシーンみたいなものに含まれるんですよ。だからブッキングで、色合いの似た人たちと一緒になったり。それで自然とそういうのが好きな人たちが集まるようになる。

カマクラ:はい。

:で、もう知られていれば、いいんですよ。

カマクラ:知られていれば・・・。

:知られていれば。この人はこういう感じ、あの人はこういう感じっていう風に。知られていれば、それを好きな人たちが見にくる。ただ、それを知らない人たち・・・情報が届いてない人たちは・・・。

カマクラ:それは見る方が知らないってことですか?

;そう。選択できないから、もっと伝えなきゃいけない。

カマクラ:底上げっていうのは、認知を広くしていくってことですか?

:そう。自分の活動もそうだし、シーンみたいなものの全体の。

カマクラ:粥さんの、シーンを上げていきたいっていう気持ちは、出演されているライブのブッキングなどから感じます。

:ライブをやって、お客さんが来てほしいってのはもちろん思ってるんですけど、それを突き詰めて考えると、好きなシーンとか好きなジャンルを底上げしたいって気持ちになってくる。今、即興とかノイズ、アヴァンギャルド、、、ってまた一言では括りきれないんだけど、だと康くん(康勝栄さん)が、MultipleTapっていうイベントプロジェクトを立ち上げて、それは康くんもシーンみたいなものの全部を上げようって気持ちでやってるのかなぁと思うんだけど。あまりそういう話はしたことないんだけどね。秩父4DとかもMultipleTapのイベントで、今特に重要な動きの一つなんじゃないかな。

カマクラ:康さんのやっていることが大きいということですね。

:そうとうデカイと思う。

カマクラ;ずっと前から康さんのお名前、粥さん口にしていますよね。

:康くんがいなかったら、もっとわかりづらいよ。例えば、横浜黄金町試聴室、っていう地域だけだったり、点々としてくる。康くんのおかげで、点々としているものが一つにまとまって、こういうものですよ、と見やすくなってると思う。で、そうなってくると、いろいろなことがハッキリしてくるんですよ。

カマクラ:ふんふん・・・。

:まず、人に伝わりやすい状態になり、そうなってくると、バグシンセ自体も、どれぐらい情報発信すればいいのか考えられるようになってくる。こうすればいい、次にまた、こうすればいい、っていう感じで。

カマクラ:ある一人の取りまとめ役がいるってことが大事だったりするのかな・・・とか思いました。

:う〜ん。誰かが発信したことに、共感する人がそこに集まり・・・、だからそういうことを全く考えていない人たちは、そこには集まらないだろうと思うしね。

2.やる時は

:無理をしないように、無理にならないようにってやってきてるけど、でも無理をしなきゃいけない時っていうのはきっとある。

カマクラ:無理をしなきゃいけない時、それってどういう時ですか?

:頑張らなきゃいけない時。

カマクラ:頑張らなきゃいけない時・・・ははは・・・。

:ははは・・・。これ、やらなきゃみたいな。それは僕だってもちろん持ってますよ。別に楽したいわけじゃないんです。ただなんと言うか、気合いとか、根性論みたいな話になると、なんかちょっと違うなって。気合い必要な時はあるけど・・・みたいな。

カマクラ:はい。

:僕、緩いって誤解されやすいんですけど・・・。

カマクラ:やる時はやってるよと、言っておきたい。

:はい。(レコーダーに接近しながら) 声を大にして・・・。

3.やりたくなったら・・・

:実はおれも大崎l-eでインタビューライブみたいなのを企画して、第二回までやったんだよ。

カマクラ:えー!

:今年入ってから、まず一人目で勇馬君(竹下勇馬さん:自分で改造を施したelectro bassを主に演奏する音楽家)。楽器の説明とか・・・。

カマクラ:それめちゃめちゃ面白そうですね。勇馬さんの楽器を説明してもらえたら・・・割と説明が求められるというか。

:そう。で、第二回目が高岡大祐さん。

カマクラ:チューバの高岡さん!

:面白くって、いろんな人呼んでやりたいなって思ってたんだけど。なかなか自主企画ができなくて。

カマクラ:粥さんはまず演奏がありますからね。バグシンセの。

:l-eの坂本拓也さんとかにも、”ちょっと忙しいんです。企画疲れちゃいました”って。

カマクラ;そう言ったんですか?

:3月に勇馬君とちょっと大きめのをやったんですよ。黄金町試聴室で。それで本当に疲れてしまって。ライブもたくさんあるし、ちょっと置いとこうかなって。さっきのように、疲れちゃったって言ったら、”いいんだよ。それでいいんだよ。やりたくなったらやればいいんだよ”って言ってくれた。とてもありがたかったです。

カマクラ:いいですね。

4.リハ終わり

※この日9月14日は、千駄木Bar Issheeで粥さんのライブがありました。それのリハ終わりに近くのカフェで取材させてもらっています。

カマクラ:なんか、リハが終わって、元気になりましたね。

:DJ Urineっていう、刺青が入ってて、世界各国渡り歩いて演奏してる人と対バンで。なんかマリファナ大好きみたいな感じで見た目もごつくて、警戒してたんだよね。で、リハやってたらすごい繊細な人で・・・。

カマクラ:ああ、ギャップにやられた。

:はあ〜、なんだ。いい奴じゃん!って。ははは・・・。

カマクラ:はっはっは。

:英語も優しく話してくれて。ふ〜、よかったよかったって。安心しました。

カマクラ:ははは・・・。よかったですね。安心。

:うん。安心のDJ Urine。

5.写真

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カマクラ:最近ツイッターのアカウントの画像変わりましたね。何かあったんですか?

:あれはなんか、勇馬君とやってるzzztっていうユニットがあって、そのユニットの活動の一環で写真とか撮っちゃおうよとなって。カメラマンの友達にお願いしました。

カマクラ:そうなんですね!

:ただ、全然使う機会がなくて。せっかく撮ってもらったから使いたいなと。ちゃんと謝礼も渡して撮ってもらったんですよ。

カマクラ;なるほど、結構前のやつも好きでした。

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:俺も好きです。

カマクラ:なんか緑で、目のところが光ってる写真。バグシンセの色と重なっていいなと思います。

:基盤の色ね。そうあれはいいんだけどね。liiilのエリヲちゃんが撮ってくれたんだけど。奇跡的にうまく撮れた。

カマクラ:あとから編集したんじゃなくて、ああいう写真なんですか?

:ああいう写真。ははは・・・。

カマクラ:やばいっすね!

:奇跡の一枚。あれはいつか自分のソロアルバムを作ったらジャケにしようと思っていた。

6.バグシンセは

カマクラ:バグシンセはずっと続けようと思っているんですか?

:うん。

カマクラ:辞めるつもりとかなさそうですね。

:おれ、根本的にやんなきゃいけないこととか考えてない。だって、いつでも(バグシンセ)捨ててもいいんだもん。

カマクラ:ああ、そうなんですよね、きっと。

:うん。だけど、面白いからやりたいし、この面白いことでいろんなことがもっとできるし・・・みたいな感じがあるかな。それでやってる。

 

中田粥 KAYU NAKADA

Twitterより:サーキットベンディングの一種「バグシンセ」と呼ばれる電子楽器数台分の剥き出しにされた回路基板を用いてリアルタイムに電子回路をショートさせ演奏を行っている。 《《》》、相殺i(略)、zzzt、そばうどん