【第六回】藤巻鉄郎【心にざっくり刻まれる】

藤巻さんは、ドラマーです。時々、話している時とはまったくちがう顔でドラムを叩いてるのを何回か見たことがあります。その時の藤巻さんの眼差しはとても優しいと思います。

目次

  1. ドラムの話
  2. 即興演奏
  3. 外山さんのレッスン
  4. セノオGEEと高岡さん
  5. やりたいこと
※9月24日、南行徳でお話を伺いました。

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1.ドラムの話

カマクラ:ドラムを始めたきっかけは何だったんでしょう。

藤巻:結構小さい時から・・・幼稚園くらいの時からマーチングバンドみたいなのをやって、小学校にあがってからも盆踊りとかで和太鼓を叩いたりして。それがすごく面白くて。

カマクラ:幼稚園のマーチングの時から結構、熱中されていた感じでしょうか。

藤巻:うーん、叩くのは面白かったけど、お披露めする時に白いタイツを履かなきゃいけなくて。それがすごい嫌であまりやりたくなかったかも。

カマクラ:ドラムが楽しかったというより、白いタイツが嫌だった、の方が強そうですね。

藤巻:そうだね、強いかな。

カマクラ:小学校の時叩いた和太鼓はどうでしたか。

藤巻:そうだね・・、基本的に子供って太鼓が好きだな〜と。最近キッズ向けのワークショップに参加させてもらって。俺がパーカッションで高岡さん(高岡大祐さん)がチューバで、それにヴァイオリン、フルート、チェロという編成。

カマクラ:へ〜!どんなワークショップですか?

藤巻:生音に対して子供が踊る。本来は踊るためのワークショップなんだけど、子供達はかなり太鼓に群がって夢中になるんだよね。ついこの前の、JAZZ ART せんがわの、屏風と公園で演奏するっていうイベントの時も、子供は太鼓に群がるんだよね。

カマクラ:へ〜!

藤巻:叩いたりとか。叩き始める子供って、目がなんだか狂気じみた感じになるんだよね。すごい。楽しい顔をするというより、叩いてやるぜオラ〜!みたいな顔。

カマクラ:それって子供が叩ける時間もあるんですか?

藤巻:いや、そういうつもりでもないんだけど、置いとくと勝手に。叩かせてあげたりとかもする。

カマクラ:それは昔の自分がフラッシュバックするみたいな、そういうわけでもないんですか?

藤巻:そうだね、自分もこういう感じだったのかな、と思う。

カマクラ:ドラムセットで叩きはじめたのはいつですか?

藤巻:17歳くらいかな。高校の部活を引退して、暇になっちゃって。

カマクラ:ふ〜ん、部活は何をされていたんですか?

藤巻:空手部。

カマクラ:え〜!!

藤巻:それはそれで、夢中になってやってたんだよ。それを辞めてどうしようかなと思った時に、ドラムをやり始めた。最初はブルーハーツとか、ビートルズとかをなんとなくコピーして。

カマクラ:へえ、ロックバンドですね!

藤巻:うん、メロコアとかもコピーしてました。ハイスタとかブラフマンとか。

カマクラ:へえ、思いっきりバンドですね!

藤巻:そうだね。

カマクラ:さすがに、最初っから即興のドラムをされる方って珍しいのかも、と思います。ジャズとかってやってらっしゃらなかったんですか?

藤巻:ジャズは、ドラムをやり始めるちょっと前に聞いて、すげえカッコイイと思ったけど、さすがに難しすぎて。やりはしなかった。家でも父親がソニーロリンズとかを流したりしてて、好きだったよ。コルトレーンとか。

カマクラ:聞いてはいたけど、やりはせず、ロックバンドとかのコピバンをやっていて・・・。

藤巻:そう、大学入っても軽音楽部に入って。大学でもロックとかメロコアとかやってた。だから、大学の頃一緒にやってた人とかが今の俺を見ると、ちょっとビックリすると思う。

カマクラ:藤巻さん自身、今やってることを昔から想像してたわけではないですよね。

藤巻:そうだね。

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※大沼志朗氏とのデュオの様子

2.即興演奏

カマクラ:即興演奏に関して、どういうことを考えているのか聞きたいです。

藤巻:即興演奏だから、何も決まってないわけだから、自分が普通に考えていることとか、出そうと思ってることとかが、一番前面に出る音楽って感じがするかな。そうじゃない人もいるとは思う。練習とか毎日してないと、してないってことがすぐに出てきてしまう音楽な感じはする。ものすごく反映される気がする。

カマクラ:ふんふん・・・。

藤巻:やりながらいろんなこと考えたりするからね。

カマクラ:どんなことを考えるんですか?。

藤巻:うーん、すごい変な言い方すると、あんまり即興演奏、上手い下手って言い方で言うと、自分はそんなに上手いほうではないと思う。まだまだ、全体を俯瞰して見れない。即興演奏が始まって、いろんなことがあって、それを上から見るってこととか。

カマクラ:上から見るってどういうことですか?

藤巻:自分が空中に浮いて、ということ。自分は演奏してるんだけど、自分は空を飛んで、共演者それぞれの人が起こしている音楽を第三者的に見る、というか。それが上からってこと。上から目線ではないよ。

カマクラ:なるほど、自分は演奏してるから、なんというか、中身だけ上に行って、それが演奏者たちを見る、みたいな感じですかね。

藤巻:そう。自分が出したい音を出して、満足できるものでもないからね。

カマクラ:俯瞰して見て、全体が良くなっているかどうか。

藤巻:そういうことは考える。まあ難しいね。

カマクラ:自分で演奏してるわけだから、とても難しいですね・・・。

3.外山さんのレッスン

カマクラ:特に好きなドラマーがいたら、よかったら教えてほしいです。

藤巻:即興の人でかな?

カマクラ:いや、どういうドラマーでもいいです。

藤巻:ずっと好きなのは・・・好きっていうか、実際に習いに行ったこともある、外山明さん。

カマクラ:あ、習いに行ってらっしゃったんですね!

藤巻:うん、一瞬だけど。5ヶ月くらい。

カマクラ:どんなレッスンだったんですか?

藤巻:普通のレッスンではないよ。基本的には個人レッスンなんだけど、前に授業を受けた人がそのまま残って、次の人のレッスンを聞いてて、一緒にセッションとかもしたりして。だんだん増えていくみたいな。

カマクラ:へ〜!別に終わっても帰らなくていいんですね。面白いですね。

藤巻:基本的に、人のやってることを聞くっていうことを重要視してたと思う。

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※ICP Orchestraを観て興奮している様子。ドラマーのHan Benninkと。

4.セノオGEEと高岡さん

カマクラ:今までの活動で、特に転機になったと感じていることや、大きな出会いだったと思う人がいたら教えてほしいです。

藤巻:そうだね、さっきの外山さんのレッスンを受けにいったのはとても大きかった。それと、前に灰汁っていうヒップホップユニットがあって、もう解散しちゃったんだけど、MCを担当していたセノオGEEって人。ちょっと年上の人で40幾つくらいの人なんだけど、その人もすごい・・・影響を受けたっていうか、すごい・・・心にざっくり刻まれる。やってる音楽もめちゃくちゃカッコイイんだけど、すごいいい経験になった。今、セノオGEEはソロでやってる。全然ドラマーじゃないんだけど、すごく影響受けた。

カマクラ:ふんふん、どんな影響なんでしょうか。

藤巻:音楽にも反映されてる気はする・・・という言い方になるかな。わかりづらいと思うけど。なんかね、許せないことは許せないっていう所とか。社会に対することとか。自分の言葉で、自分の身の上話を音楽にしたりする。あまりヒップホップにならなそうな気がするんだけど、ものすごくカッコイイ。

カマクラ:へー!

藤巻:マジでやばい。その人と、さっきも話に出た高岡大祐さん。

カマクラ:高岡さんとは最初どこで会ったんですか?

藤巻:俺は即興演奏好きだったから、よく高岡さんの演奏とかも、ひっそり聞きに行ったりしていて。

カマクラ:ひっそり・・・。

藤巻:全然、挨拶とかしないで。それで、下北沢のAPOLLOってライブハウスでインプロのジャムセッションをやってた時に、高岡さんが来てて。その時に一緒に演奏したりして、終わった時に高岡さんの方から連絡先を聞いてきてくれた。

カマクラ:それは嬉しいですね!

藤巻:高岡さんの人となりとかも、もともと知っていて。面白くない演奏とかすると・・・。一回惚れ込んだ人だと、そんな一回や二回つまらない演奏をしても、そこまで拒否はしないけど、一緒に演奏する必要ないなと感じたら、一切音出さなくなる。

カマクラ:すごいですね。素敵です!

藤巻:あの音の響きは他では絶対に味わえないから、一度は聴いた方がいい。

 5.やりたいこと

カマクラ:いい基準とか、いい演奏者って藤巻さんの言葉だと、何なんでしょう?

藤巻:出音一発か二発くらいで、ああ、いいなって思う人とかいるね。やっぱグッとくるというか。その一発か二発の音でその人の背景を感じるというか、いろんなものを感じさせる人。

カマクラ:たしかに、背景感じますよね・・・。

藤巻:最近は特にそうなんだけど、できるだけ普通のドラムセットで、誰もやってないような演奏をしたいです。奇をてらうわけではなく。あまり人の真似はしたくないから。これまでは小物とかを持ってきて、それを使ったりもしていたけど、できるだけスティックとドラムセットだけで自分しか出せない音を出したい。

カマクラ:なるほど。

藤巻:ただ、今こう考えてるってことで、来年には変わってるかもしれないけど。即興演奏はできるだけ一生やっていきたい。

 

藤巻鉄郎

プロフィール :打楽器、ドラム奏者。 2014年にソロ音源「奏像」を制作。 現在は1tuba、2percussionの「歌女」、インストゥルメンタルバンド「GROUP」、シンガーソングライターの「入江陽」、「カマクラくん」のバンド編成での演奏をはじめ、個人での演奏活動も多い。

Twitter:https://twitter.com/tettsuro

Live Schedule:http://kickandstick.blogspot.jp/

【第五回】中田粥【声を大にして・・・】

初めて試聴室へ遊びに行った折、強烈なノイズ音とともに、にこやかな表情で緑の基盤をいじくる粥さんの姿を見てしまいました。何だこれは一体!と大ショック・・・。このインタビューでは触れられませんでしたが、もともとクラシックピアノを弾いていたという粥さん。固定観念にとらわれない、自由な空気をいつも感じる大好きなミュージシャンです・・・。

目次
  1. 最近
  2. やる時は
  3. やりたくなったら・・・
  4. リハ終わり
  5. 写真
  6. バグシンセは

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※2015年9月14日千駄木にてお話を伺いました。

1.最近

カマクラ:バグシンセ (シンセサイザーを分解して、その中身を直接触ってショートさせたりして音を出す楽器。緑色の基盤がむき出しになっているのが特徴的) の調子は最近どうですか?

:バグシンセ調子いいっすね。

カマクラ:いいですね。

:ほっといても音がでますから・・・。ははは。

カマクラ:え〜!ははは!

:おれがいなくても音が出る。まあ最近(2015年9月現在)のことで言うと、大阪に引っ越します。

 

カマクラ:大阪に行くと、いろいろ変わりますよね。生活とか、関わる人とか。

:向こうに行っても、やりたいこととかは特に変わらないです。何ていうか、全体的な底上げって感じかも。

カマクラ:全体的な底上げ・・・。即興やノイズっていう音楽と、歌物っていうのは違うものなんですかね。全体的な底上げに、歌物も入っているのかな・・・とか思いました。

:うーん、即興と歌物はどこが違うと思う?

カマクラ:いや、それがなかなかわからなくて・・・。

:何が違うのか。

カマクラ:音はどっちもこだわってて・・・。

:それはそうだね・・・。一応、うっすらとしたシーンみたいなものが見える気がして。きっとカマクラくんも、カマクラくんって歌物のバンドが、何かしらのうっすらとしたシーンみたいなものに含まれるんですよ。だからブッキングで、色合いの似た人たちと一緒になったり。それで自然とそういうのが好きな人たちが集まるようになる。

カマクラ:はい。

:で、もう知られていれば、いいんですよ。

カマクラ:知られていれば・・・。

:知られていれば。この人はこういう感じ、あの人はこういう感じっていう風に。知られていれば、それを好きな人たちが見にくる。ただ、それを知らない人たち・・・情報が届いてない人たちは・・・。

カマクラ:それは見る方が知らないってことですか?

;そう。選択できないから、もっと伝えなきゃいけない。

カマクラ:底上げっていうのは、認知を広くしていくってことですか?

:そう。自分の活動もそうだし、シーンみたいなものの全体の。

カマクラ:粥さんの、シーンを上げていきたいっていう気持ちは、出演されているライブのブッキングなどから感じます。

:ライブをやって、お客さんが来てほしいってのはもちろん思ってるんですけど、それを突き詰めて考えると、好きなシーンとか好きなジャンルを底上げしたいって気持ちになってくる。今、即興とかノイズ、アヴァンギャルド、、、ってまた一言では括りきれないんだけど、だと康くん(康勝栄さん)が、MultipleTapっていうイベントプロジェクトを立ち上げて、それは康くんもシーンみたいなものの全部を上げようって気持ちでやってるのかなぁと思うんだけど。あまりそういう話はしたことないんだけどね。秩父4DとかもMultipleTapのイベントで、今特に重要な動きの一つなんじゃないかな。

カマクラ:康さんのやっていることが大きいということですね。

:そうとうデカイと思う。

カマクラ;ずっと前から康さんのお名前、粥さん口にしていますよね。

:康くんがいなかったら、もっとわかりづらいよ。例えば、横浜黄金町試聴室、っていう地域だけだったり、点々としてくる。康くんのおかげで、点々としているものが一つにまとまって、こういうものですよ、と見やすくなってると思う。で、そうなってくると、いろいろなことがハッキリしてくるんですよ。

カマクラ:ふんふん・・・。

:まず、人に伝わりやすい状態になり、そうなってくると、バグシンセ自体も、どれぐらい情報発信すればいいのか考えられるようになってくる。こうすればいい、次にまた、こうすればいい、っていう感じで。

カマクラ:ある一人の取りまとめ役がいるってことが大事だったりするのかな・・・とか思いました。

:う〜ん。誰かが発信したことに、共感する人がそこに集まり・・・、だからそういうことを全く考えていない人たちは、そこには集まらないだろうと思うしね。

2.やる時は

:無理をしないように、無理にならないようにってやってきてるけど、でも無理をしなきゃいけない時っていうのはきっとある。

カマクラ:無理をしなきゃいけない時、それってどういう時ですか?

:頑張らなきゃいけない時。

カマクラ:頑張らなきゃいけない時・・・ははは・・・。

:ははは・・・。これ、やらなきゃみたいな。それは僕だってもちろん持ってますよ。別に楽したいわけじゃないんです。ただなんと言うか、気合いとか、根性論みたいな話になると、なんかちょっと違うなって。気合い必要な時はあるけど・・・みたいな。

カマクラ:はい。

:僕、緩いって誤解されやすいんですけど・・・。

カマクラ:やる時はやってるよと、言っておきたい。

:はい。(レコーダーに接近しながら) 声を大にして・・・。

3.やりたくなったら・・・

:実はおれも大崎l-eでインタビューライブみたいなのを企画して、第二回までやったんだよ。

カマクラ:えー!

:今年入ってから、まず一人目で勇馬君(竹下勇馬さん:自分で改造を施したelectro bassを主に演奏する音楽家)。楽器の説明とか・・・。

カマクラ:それめちゃめちゃ面白そうですね。勇馬さんの楽器を説明してもらえたら・・・割と説明が求められるというか。

:そう。で、第二回目が高岡大祐さん。

カマクラ:チューバの高岡さん!

:面白くって、いろんな人呼んでやりたいなって思ってたんだけど。なかなか自主企画ができなくて。

カマクラ:粥さんはまず演奏がありますからね。バグシンセの。

:l-eの坂本拓也さんとかにも、”ちょっと忙しいんです。企画疲れちゃいました”って。

カマクラ;そう言ったんですか?

:3月に勇馬君とちょっと大きめのをやったんですよ。黄金町試聴室で。それで本当に疲れてしまって。ライブもたくさんあるし、ちょっと置いとこうかなって。さっきのように、疲れちゃったって言ったら、”いいんだよ。それでいいんだよ。やりたくなったらやればいいんだよ”って言ってくれた。とてもありがたかったです。

カマクラ:いいですね。

4.リハ終わり

※この日9月14日は、千駄木Bar Issheeで粥さんのライブがありました。それのリハ終わりに近くのカフェで取材させてもらっています。

カマクラ:なんか、リハが終わって、元気になりましたね。

:DJ Urineっていう、刺青が入ってて、世界各国渡り歩いて演奏してる人と対バンで。なんかマリファナ大好きみたいな感じで見た目もごつくて、警戒してたんだよね。で、リハやってたらすごい繊細な人で・・・。

カマクラ:ああ、ギャップにやられた。

:はあ〜、なんだ。いい奴じゃん!って。ははは・・・。

カマクラ:はっはっは。

:英語も優しく話してくれて。ふ〜、よかったよかったって。安心しました。

カマクラ:ははは・・・。よかったですね。安心。

:うん。安心のDJ Urine。

5.写真

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カマクラ:最近ツイッターのアカウントの画像変わりましたね。何かあったんですか?

:あれはなんか、勇馬君とやってるzzztっていうユニットがあって、そのユニットの活動の一環で写真とか撮っちゃおうよとなって。カメラマンの友達にお願いしました。

カマクラ:そうなんですね!

:ただ、全然使う機会がなくて。せっかく撮ってもらったから使いたいなと。ちゃんと謝礼も渡して撮ってもらったんですよ。

カマクラ;なるほど、結構前のやつも好きでした。

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:俺も好きです。

カマクラ:なんか緑で、目のところが光ってる写真。バグシンセの色と重なっていいなと思います。

:基盤の色ね。そうあれはいいんだけどね。liiilのエリヲちゃんが撮ってくれたんだけど。奇跡的にうまく撮れた。

カマクラ:あとから編集したんじゃなくて、ああいう写真なんですか?

:ああいう写真。ははは・・・。

カマクラ:やばいっすね!

:奇跡の一枚。あれはいつか自分のソロアルバムを作ったらジャケにしようと思っていた。

6.バグシンセは

カマクラ:バグシンセはずっと続けようと思っているんですか?

:うん。

カマクラ:辞めるつもりとかなさそうですね。

:おれ、根本的にやんなきゃいけないこととか考えてない。だって、いつでも(バグシンセ)捨ててもいいんだもん。

カマクラ:ああ、そうなんですよね、きっと。

:うん。だけど、面白いからやりたいし、この面白いことでいろんなことがもっとできるし・・・みたいな感じがあるかな。それでやってる。

 

中田粥 KAYU NAKADA

Twitterより:サーキットベンディングの一種「バグシンセ」と呼ばれる電子楽器数台分の剥き出しにされた回路基板を用いてリアルタイムに電子回路をショートさせ演奏を行っている。 《《》》、相殺i(略)、zzzt、そばうどん

【第四回】堀切基和【4割ウソ】

楽しそうな人だな、と思って、何をされてるのか気になったのが最初です。ホリキリさんに、映像のこと、人生のこと、を聞いてみたくなりました。

目次
  1. 序盤
  2. PVを撮りたいわけ
  3. 硬かった
  4. 大阪から東京へ
  5. レンタル
  6. PVの話
  7. 常に
  8. 配分
  9. PVの話その2
  10. 終わりに

※9月9日(水)、品川某所にてお話を伺いまいした。

※ホリキリ監督最新作。後輩の男の子を好きになったことをラップしたガクヅケ木田のPV

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※福岡の友人宅にて合宿撮影中の一コマ

1. 序盤

カマクラ:公開されている映像を見て感じるのはスピードなんです。たくさん作っていらっしゃるので、慣れているのかなと思ったり。

ホリキリ:いやいや、全然そんなことないと思いますけど。去年の12月だかにPOWER(10代後半から30代までの45人程のクルー。東京各所で活動中)のPVを撮って。それが楽しかったんで、その時一瞬だけどPVを100本撮ろうって思ったんですよ。

カマクラ:PVを100本。

ホリキリ:それはもう一瞬で無理ってなりました。ただ、量をこなしたいっていうのはあったんですよね。こなすっていう言い方はちょっと良くないかもしれないけど。もっとハイペースで撮りたかったっていうのはあります。

カマクラ:映像を撮るっていうのはずっと、やってらっしゃるんですか?

ホリキリ:映像は、2008年に専門学校に入って。ENBUゼミナールって所なんですけど、それは一年だけで卒業しました。その時に短編の映画とかも撮ってましたね。その後もちょこちょこ撮ったりしながら、助監督とか、周りのスタッフ的なこともしながら、っていう感じですね。

カマクラ:ふ〜ん・・・。

ホリキリ:PVはさっき言ったPOWERのが初めてというか。まあ、似たようなことはやっていたと思うんですけど。

カマクラ:専門学校に入ろうと思ったのは、もともと映像に興味があったんですね?

ホリキリ:そうですね・・・。2005年か2006年に東京来たんですけど。出身は大分で・・・。

カマクラ:え、そうなんですか?

ホリキリ:大学は大阪で。全然映像とか関係なくて、理系の普通の学科でした。中退しましたけどね。

カマクラ:それは、つまんなかったんですか?

ホリキリ:う〜ん、やる気がなかったですね。

カマクラ:ははは・・・。

ホリキリ:すごく簡単に言うとやる気がなかった。辞めたんですよ・・・。

カマクラ:そうなんですね。

ホリキリ:そういえば、このインタビュー、4割くらい嘘ついてもいいですか。

カマクラ:4割・・・はっはっは・・・。嘘、いいっすね(笑)。

ホリキリ:インタビューの黄金比率なんじゃないかと。ははは・・・。真実と嘘の比率が6:4くらいが、一番面白いインタビューになるんじゃないかと。

カマクラ:え、それどういうことですかね?

ホリキリ:っていうのをネットで見つけたんですよ。

カマクラ:?

ホリキリ:っていう嘘もついていこうかなと、ははは。

カマクラ:はっはっは・・・。

2. PVを撮りたいわけ

カマクラ:大学で何してらっしゃったんですか?

ホリキリ:映画はほとんど見てなくて、軽音サークルには入っていました。パートはベースで。

カマクラ:ベースな感じします。まあ、嘘かもしんないけど。

ホリキリ:嘘ですか!ははは・・・。まあコピーばっかだったんですけどね、サークル自体は。でも一応オリジナルのバンドもやったりしながら。

カマクラ:それはベースで参加してた感じで、ホリキリさんが曲を作ったりはしてなかったんですか?

ホリキリ:そうですね、自分でも作ろうとはしてみたんですけど、全然できないですよね。まあ、でもわからないです。今みたいにサウンドクラウドとかあれば、上げるくらいのことはしてただろうなと思いますけどね。

カマクラ:大学入学は・・・。

ホリキリ:2001年です。で、留年とかもしたりしながら、ダラダラと2005年くらいまで。mixi全盛期ですね。YouTubeが出るちょっと前くらいで、だから動画とかは・・・まあ、これは嘘ですけど、共有サイトですね。当時はPVって見れないじゃないですか、ケーブルテレビ以外だと。だからそういうところで交換とかしてましたね。交渉とかしたりするんですよ、やったことないですか?

カマクラ:ないです。どんな感じでしょう?

ホリキリ:お互いの手持ちファイルが見れるようになっていて、要は、それを申請しても向こうが許可をしないと受け取れないシステムになってるんです。だから、これをくれるんだったらこっちもあげてもいいよ、って感じで・・・。あ、ここの部分、全部嘘ですよ。

カマクラ:ふんふん・・・。

ホリキリ:だから、今みたいに簡単に見れるわけではないので、そうやって苦労して見たものが3、4年後に普通にYouTubeで見れるっていう。あれは何だったんだって感じはあります。

カマクラ:たしかに今となっては、もっと楽に、質の高いものが自由に見れる状態になった。

ホリキリ:今は誰もが見ようと思えば見れる状態にあって、じゃあどうしたら多くの人に見てもらえるか、みたいのを作り手が考えていかなきゃいけない感じになってますよね。それが、変にうまい人が人気出ちゃってる感じはあるかも。それが何とも言えない。

カマクラ:両立する人がうまく世の中に出て行く。

ホリキリ:どうなんですかね。全然話がそれていっちゃうけど、今時のレコード会社の人っていうのは、逆に発掘欲そそるんじゃないかな、とかも思ったりします。

カマクラ:それって、どういうことですか?

ホリキリ:あんまり、面倒見ようみたいな人が少なそうじゃないですか。採算取れないとか、すぐ考えたりしそう。そうなると手をつけていないバンドとかミュージシャンって前以上にいろいろいるんじゃないかなと思ったりしますけどね。単純に知り合いっていうか、もっと売れてもいいんじゃないかなっていう所から、そういう発想になっていくのかも。中々見つからないもんなんだなって思います。

カマクラ:そうなんですね。

ホリキリ:そういう歯がゆい思いからPV作ったりしてるとこはあると思います。映像つくだけでより多くの人が聴いてくれるのなら、って感じで。

カマクラ:それはそうですよね。全然違います。

※先述のPOWERの中心人物、10,10,10のPV。ホリキリさん監督。

3. 硬かった

ホリキリ:まあ、ろくでもない大学生活でしたね。

カマクラ:大学時代に特に印象に残っていることはありますか?

ホリキリ:う〜ん、それが、突出したヤバいエピソードが無いっていうのがヤバい。

カマクラ:はっはっは・・・。

ホリキリ:本当に毎日、授業に行かずに、インターネットとかして。サークルに行き・・・本当にね。そう考えると今の知り合いの大学生は偉いですよ。ちゃんと真面目に、なんか音楽もかっこいいし。すげえなってホントに、思ったりするけど。僕は就活も全くしなかったですね。

カマクラ:ちょっと意外です。してそう。

ホリキリ:今大学生だったらしたい気持ちありますけど。ホントにフニャけてましたね。

カマクラ:ホリキリさんは大学時代にいろんなことが形成されたんじゃないでしょうか。

ホリキリ:それはそうかも。大学というか、大阪に行ってよかったなと思いますね。その時にいわゆる関西ゼロ世代っていう人たちが・・・まあオシリペンペンズとか、あふりらんぽとか。あと情報としてボアダムスとかも入ってくるんですよ。

カマクラ:そうか、ボアダムスも関西なんですよね。

ホリキリ:それを聞いたりしながら、ライブに行ったりして。今はもうないんですけど新世界ブリッジっていう、その時キーになった場所があって、よく行きました。ホントに面白かったです。そこはかなり、影響をうけたんじゃないかな。

カマクラ:へ〜・・・。

ホリキリ:そういうとこに行くようになったのは、サークルの先輩で千住宗臣さんとバンドやってた人がいて。当時千住さんは全国的にはまだそこまで有名ではなかったけど、たしか9とか10とかバンドを掛け持ちしてたような・・・。知ってる人には超ヤバい人として認知されてて。そういうところで得た影響はあると思います。

カマクラ:どういう影響を受けたんですか?

ホリキリ:何ですかね・・・いい質問ですね(笑)。

カマクラ:ははは、ありがとうございます。

ホリキリ:“◯◯に影響を受けた”って、インタビューでよくあるじゃないですか。でも、“どういう影響を受けたんですか”っていうのは結構、斬新な気がします・・・。まあ、これも嘘かもですけど(笑)。

カマクラ:はっはっは・・・。

ホリキリ:そうですね、一番はMASONNA(マゾンナ)さんのライブ見に行って・・・。

カマクラ:マゾンナさん?

ホリキリ:マゾンナさん。ノイズミュージシャンです。ワンマンライブを、1、2分とかで終わらす人なんですよ。

カマクラ:え〜・・・。ははは。

ホリキリ:まあノイズの重鎮というか、非常階段のJOJO広重さんがやってるレコード店で働いたりとかもされていたんですけど。その人のライブ見に行った時に・・・。結構やばいバンド見に行ったら身の危険感じる時あるじゃないですか。

カマクラ:そうですね、やばい感じの人。

ホリキリ:それを、他の人と違うレベルに感じた人というか。その前にペンペンズとか見てるんですけど、フロアとステージと関係なく絡んでくるみたいなのがあって。でも何回かそういうライブを体験して、俺ももう鈍感になってきてるのかなと思っていたんですけど、慣れたかなと。

カマクラ:はい。

ホリキリ:それで、マゾンナさんのライブ見てたら、すごく唐突にダイブっていうか、タックルみたいなのが飛んできて。はっはっは・・・。

カマクラ:はっはっは・・・。

ホリキリ:全く反応できずに・・・。あと、マゾンナさんめちゃくちゃ硬いんですよ。

カマクラ:硬い、何が硬いんですか?

ホリキリ:体が硬いんです。

カマクラ:ははははは・・・!

ホリキリ:すごく痛くて。向こうとしてはタックルしてきたつもりじゃないと思うんですけど。そういう隔たりみたいなもの無意識にまだ持っていたんだ、とか思って。そういうものを教えられたような気がしました。でも、本当に危険なことはないですよ。ただ、ノイズがひたすらカッコイイんです。印象強いですね。

カマクラ:それは思い出深そうですね。体が硬いっていうのは筋肉でしょうか。

ホリキリ:なんかね・・・硬かったんですよ。とにかく硬かったんです。

カマクラ:ははは・・・。

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※大学時代に愛用していた冷蔵庫。引越しを機に、今年の夏に廃棄した。

4.大阪から東京へ

ホリキリ:まあ全体的に、関西の・・・、ステージあるのにわざわざフロアで演奏するバンドが多かったし、そういう良さはありました。

カマクラ:今まで思ってたことがぶっ壊される感じ・・・?

ホリキリ:価値観がぶっ壊れてしまったなっていう感じでもないんです。なんですかね・・・いや、やっぱりそれかもしれないです。

カマクラ:えっ?ははは・・・。

ホリキリ:そう言ってしまうと、恥ずかしいから違うことを言おうとしてるだけなのかもしれないです。

カマクラ:ははは・・・。

ホリキリ:自分の価値観が…ぶっ壊れたかも…しれないです。ていうかこれ自分の口からは言えないですよね。

カマクラ:たしかにそうですよね。

ホリキリ:東京きてからも、何かしら影響は受けているんです。大学時代に悔やまれるのは、映画を全然見に行かなかったことですね。

カマクラ:そうなんですか。

ホリキリ:あんだけ暇を・・・いや暇ではなく、時間を無駄にしていた時に、近くに名画座でもあれば、また変わってきていたかもしれないです。

カマクラ:無駄ではないと思うんですけど。全然無駄とかではなく、ただ映画館も行けばよかったなっていう。

ホリキリ:そうですね。

カマクラ:東京には出てこようと思って、出てきた感じなのですか?

ホリキリ:みんな周りが卒業して、けっこう大阪に勤務するわけではなく東京に働きにでる人もいたし、けっこうバラバラだったんですよ。そもそも俺は大阪にずっと住んでいたわけでもなかったし。その時の気持ちとしてはホント逃げるみたいな感じですよ。かなり4年、5 年、大阪でモヤモヤしてた感じがあったんで。換気してない部屋みたいな。

カマクラ:はい。

ホリキリ:ポジティブな状況とは全く真逆にあるような、ちょっとここは居てもアレだから、みたいな感じですね。

カマクラ:そんな感じだったんですね。

ホリキリ:一応建前としては、その時、また唐突なんですけどお笑いが好きで、最初放送作家になろうと思っていたんですよ。

カマクラ:なんか合いそうです・・・。

ホリキリ:その時、NSC(吉本総合芸能学院。吉本興業が主に新人タレントを育成するために創った養成所)って東京と大阪にあるんですけど、大阪は芸人だけで、東京には作家コースもあるんですよ。

カマクラ:それにも興味があり東京へ。

ホリキリ:大阪で受けた影響っていうことではお笑いもかなりありますね。今思うと。当時大阪でバッファロー吾郎とケンドーコバヤシが、関西ではけっこう人気あったんですけど、全国的にはブレイク前みたいな感じで、その時が・・・あんまり言い方よくないかもですけど、一番面白かった時期というか。

カマクラ:なるほど、いいですね。

ホリキリ:今知ってるの俺らだけだよ、って時の。バッファローは自分でイベント打ったりとかよくやってたんです。そういうのによく行ってたわけではないんですけど、影響をうけました。関西のテレビではよく出ていたので。

カマクラ:ふ〜ん・・・。

ホリキリ:それで東京へ来て、で、入ろうとは思っていたんですよ。バイトして、初めてフリーターっていうものをやり。その時はホント一番友達いなかった時期かもしれませんね。

カマクラ:ああ、東京へ来たばかりの頃。

ホリキリ:一応地元の友達が、それこそ大学の時に一緒にバンドしてた人が西荻に住んでいて、最初そいつの家に行って、家探そうっつって。結局そのまま西荻にしたみたいな感じだったんですよ。

カマクラ:なるほど。

ホリキリ:西荻は長くて、9年住みました。ホント友達いなくて、その時にさすがにうわ〜ってなって、かといってでも、バンドをmixiで、やりませんかみたいなことをするわけでもなく、なんかお手軽な何かないかなみたいな感じで。なんだろう、全く踏み込む勇気がない方だと思うんですよ。自分は。

カマクラ:そうなんですか?わからない・・・。

ホリキリ:そんな中でも俺が、なぜか自発的にやったのが、ジャニスあるじゃないですか。お茶の水のレンタルCD屋。あそこに結構、ちょいちょい行ってたんですよ。何でもあるんで。そこの下にイベントスペースみたいなのがあった時期があって。

カマクラ:あ、そうなんですか。

ホリキリ:そこで3回くらいDJしたんですよ。

カマクラ:え〜!!初耳、それ全然知らなかったです。

ホリキリ:それはでも、誰でも参加できますよ、みたいな。

カマクラ:へ〜、オープンマイク的なDJ。

ホリキリ:そうです。それこそジャニスの客の人が来てる感じで、あんまDJって感じの人はいない感じの。それで結局、最初の2回とかはそれに出たのに誰とも絡まずにみたいな・・・。はははは。

カマクラ:ははは・・・。かけただけ。

ホリキリ:2、3回同じになった人たちがいて、その人たちとちょっと仲良くなりました。

カマクラ:それはなんか始まりっぽいですね。

ホリキリ:そう、最近会ってないですけどね。DJとか今もやってるので、行きたいなと思っているんですけどね。その時俺は、なぜかタイとか、昔のサイケっぽいのハマっていてそういうのかけてたら、あまりそういうのをかける人がいなくて、そこに。他では全然いたと思うんですけど。しかもそれ、全然ジャニスで借りたやつでもないっていうか・・・。

カマクラ:ははは・・・。

ホリキリ:別のレンタル屋で借りたみたいな。スモールミュージックって当時、高円寺にレンタル屋があって。結構いろいろ揃っていて、そこで借りたやつをジャニスでかけるみたいな。

カマクラ:たしかに、すぐ上で借りたものをそのままかけるってちょっと小っ恥ずかしいですよね。

ホリキリ:そうですね。あんまり、みんなジャニス関係なくやってる感じでしたね。すごく、まあ敷居の低いというか。

カマクラ:ははは・・・。いいですね。そういう場所、大事ですよね。

5.レンタル

カマクラ:いろいろされてるんだなって印象が。

ホリキリ:ただ、CDJとかターンテーブルとか買うまではいかず。なんか、結構俺、そういうところあるんですよ。

カマクラ:そういうところって何ですか?

ホリキリ:ベースも借り物でやってたり。なんか高いものをバーンって買って、気合い入れてやる感じじゃないんですよね・・・。さすがにそろそろ買おうと思ってるけど、カメラも俺持ってないですからね。

カマクラ:え〜!借りてるんですか?

ホリキリ:あの、小ちゃいカメラとか、ちょっとしたものはあるんですよ。でもPVをメインで撮ってるやつは毎回誰かに借りてますね。

カマクラ:へ〜!はっはっはっは。

ホリキリ:はっはっはっは・・・。

カマクラ:ちょっと驚愕です。

ホリキリ:よくはない。

カマクラ:いやもう、いいか悪いかわかりません。驚き、だって持ってると思いますもん普通。

ホリキリ:ははは、そろそろ買うんじゃないかと思ってますけどね。

カマクラ:なんか買わないって特徴的ですね。

ホリキリ:なんかね、楽器とかよりさらに買いにくいのかもしれないです。どんどん、進化じゃないけど・・・。古くなったら安くなるとかあるんですけど、その時期が、自分の希望する感じより遅いんですよ。

カマクラ:ふ〜ん・・・。

ホリキリ:もうちょっと、すぐ値落ちとかしてくれたら、逆に結構バンバン買うかもしれないです。

カマクラ:ふふふ・・・、そうか、今はもういいって時期でやっと値落ちしてるわけですね。気持ちがなくなってるところで

ホリキリ:なくなって、さらに、何間かあって、みたいな感じなんです。

カマクラ:それだと中々買わないかもしれませんね。

ホリキリ:それなのに、GoProっていう2、3万の水中とかでも大丈夫なカメラがあるんですけど、それに似たようなものを買っていて。ちょっと変な買い方をしていますね。

カマクラ:ガッツリ買うとそれにしばられたりもしそうですしね。

ホリキリ:まあ、それはポジティブに動く人が多いみたいですけどね。こんだけ払ったし、取り返すつもりで、みたいな。中々考え中です。

カマクラ:むつかしいですね。

ホリキリ:カメラ・・・しかも借りた時、借りた相手(カメラマン)を誘わずにカメラだけ借りて撮るっていう。

カマクラ:はっきりしてますね。

ホリキリ:すごい・・・よくないですね。

カマクラ:はっはっは、それは自分でよくないって言っては・・・。いいんじゃないですか。

6.PVの話

ホリキリ:理想としては、カメラマンつけてやりたいですけど、PVだといろいろ、予算とか、撮影の時間とかもありますし。

カマクラ:ホリキリさん撮影も好きですよね?

ホリキリ:好きですね。でもなんとなく、演出に専念すればよいのかもしれませんが、やっぱりカメラの腕をあげたいです。撮ってるとやっぱり、発見があるので。カメラマンに頼んだ方が絶対にいい図撮れるけど。いい点と悪い点、両方ありますね。

カマクラ:う〜ん。

ホリキリ:空気も変わりますからね。いきなりミュージシャンの人にとったら初めましてなスタッフが来て。変な現場感とか出ると良くない可能性ありますからね。ただ、少なくとも今年いっぱいは、一人でやろうと。なんか勝手に、自分で縛りを設けたみたいな感じですけど。たくさん撮りたいからっていうのもあり。

カマクラ:だったら、割と考えてたことが、できたって感じですね。

ホリキリ:ですね。それはちょっと、正直今まで・・・1983年から生きてきてから、2015年で初めてかもしれないですね。

カマクラ:よかったですね。

ホリキリ:よかった。とはいえ、もっと。クオリティを上げていかないといけないなと。結構、ダメだしされる人間の数が少ないんでね。スタッフ入れるとその人たちから何か言ってもらえるかもしれないんですけど。そういう課題もありつつ。

カマクラ:他者から何か言って欲しいですよね。

ホリキリ:そう、だから人に頼むっていうのはそういうところもあります。一人だとないから。なるべくそういう視点を持ってやるようにはしてるんですけど、でもやっぱり甘えてきちゃう部分がある。それでやってきて、発見があったのは、ミュージシャンのツッコミも的確だなっていう。ははは・・・。

カマクラ:ほ〜。面白いですね。

ホリキリ:まあ完全にお任せっていうか、そういう人もいると思うんですけど、具体的にいうとさっきのPOWERのPVとってる時に、モーツァルトくんって人が結構突っ込んでくれて。ここはこうなんじゃない、みたいな。そういうのはありがたかったですね。

カマクラ:そうなんですね。

ホリキリ:人によるかもしれないですけどね。butajiのサンデーモーニングって見ました?

カマクラ:見ました!すごく好きです。

ホリキリ:あれとかはもっとさらっとしてたんです。結構ところどころ、黄色く光ってるじゃないですか。あれは中里さん(P-VINEレコードの中里友さん)が、突っ込んでくれたんです。

カマクラ:あれは夜のシーンはなくて、ずっと朝ですよね。

ホリキリ:まあ光の、フレアっていうんですけど、元々入ってたやつもあるけど、足してるんですよね。

カマクラ:あ、そうなんですね。

ホリキリ:ちょっとやらしいと思って、最初足してなかったんですけど、綺麗だからもっと入れたほうがいいよって言ってくださって。

カマクラ:そうなんですね。

ホリキリ:割と最近よくある既成のPVの感じになるのが嫌で、こういう演出をよくみる印象があったから。でも変に意識してたなと。結果的によかったです。このbutajiのは特に反応があって。

カマクラ:いいですね。

ホリキリ:これ、何を足したかっていうと、これの前に公開したトレーラーにでてきてる光を使ってるんです。

カマクラ:そんなことできるんですね。

ホリキリ:今プラグインって言って、かませばすぐできるやつがあるんです。それをやりたくなくて。一応自分で撮った映像を重ねようかなと。まあ見てる人には関係ないですけどね。

カマクラ:いやいや、面白いです。そういうのでできてるんすね。

7.常に

ホリキリ:音楽をやってて、その後に映画とかを割と続けられたのは、完全にそっちの人じゃないからみたいな、ちょっと音楽側からの視点というか・・・ちょっと外側から見てる感じじゃないですけど、

カマクラ:はい。

ホリキリ:そういう感じがあったからかもしれません。もっとそれまで、映画とか見まくって、撮ろう撮ろうって思っていたら、またダメになってたかもしれません。

カマクラ:なるほど。

ホリキリ:割と軽い気持ちで始めたから、続けられたのかもしれないです。

カマクラ:そういうのあるかもしれないですね。

ホリキリ:逆に今度PVとか撮り始めて、ライブとか行っても今までは出演者と話したりしなかったけど、今では割と話せるようになったりして。まあ僕、映像の人だしみたいな感じで。音楽ずっとやってたら変に意識して話しかけたりできなかったかもですね。

カマクラ:はい。

ホリキリ:常にこう、自分の状況を都合よく。

カマクラ:それも言い方なような気もします・・・とってもいいなって思います。

ホリキリ:ははは・・・。

カマクラ:みんな大好きなんじゃないですかね、そういうのが。

ホリキリ:うん、そうですよね。まあ簡単に言ってしまうと外野というか。

カマクラ:そうですね。いろいろ言いやすいというか。

ホリキリ:そういう風にコントロールできるようになってきたのかもしれません。自分があまり、重くならない状況だっていう風に。自分に思い込ませるというか。

カマクラ:それは難しいですね。だいたい必死になってしまうんで。

8.配分

ホリキリ:PV撮り始めて、まだ一年もたってない状況で言うのも何ですけど、全部をガッツリ見てくれてる人ってたぶん、3、4人くらいしかいないんですよ。

カマクラ:全部をガッツリ。

ホリキリ:すごいその3、4人は、とてもありがたいことだなって。まあガッツリかはわかりませんが、全部リツイートとかしてくれて・・・。3、4人と言わず、もっと見ろよって思いももちろんありますよ。

カマクラ:もちろんありますよね。

ホリキリ:まあでも、さっきの都合いい話で、別に見ないだろうって気持ちも持って気軽に作るってスタンスにもなれますから。その時々で使い分けるっていうのも。

カマクラ:たぶん、多少そういう気持ちはないと続けられないんじゃないでしょうか。

ホリキリ:そう、それがありつつ、その基準が自分はまだ甘いなというのがありますけど。都合よくしすぎちゃってる時があるんじゃないかなと。

9.PVの話その2

ホリキリ:PVに関していうと、まず曲があって、ということですよね。純粋な自発ではない。

カマクラ:こういうミュージックビデオ作りたいから、こういう曲書いてっことにはなりませんもんね。

ホリキリ:だから、どんなPVも確実に商業的なニュアンスが含まれてますよね。

カマクラ:だから作るって感じですもんね。

ホリキリ:ただ今年、やったことは、今思うと自発的な部分も多かったなと。

カマクラ:へ〜!それってどんな感じなんですか?

ホリキリ:割と、自分から声かけたっちゃ声かけた。どっちが先って厳密には覚えてないけど。

カマクラ:ふわふわっていうか、もともと人間関係あって、みたいな。

ホリキリ:そう、だからそのふわふわって感じを作れるように、したって言いかたすると、ちょっとやらしいですけど。ナツノムジナにしても、音源出すってなって、じゃあPV作ろうって。

ホリキリ:思ったよりもミュージシャンからPV作ってくださいって言いにくいのかなと。

カマクラ:そうですね。

ホリキリ:意外とこっちとしては、軽い気持ちというか、自分の出来る範囲でならやるやるって感じ。シャンプーハッツは別に僕が監督したわけではないんですけど、あれはPVを撮るから、カメラできる人探してますみたいなTwitterが流れてて、やりたいですと。

カマクラ:フレキシブルな感じでいいですね。

ホリキリ:あんまりそういうことしなかったんですけど。その流れでにゃにゃんがプーもやって。自分の好きな音楽ばかりですよ。冷静に考えると、ナツノムジナの時は、結構仕事が忙しい時期だったんですけど、割と全然できました。しんどい時もありましたけどね、寝る時間ないとか。頼まれ仕事だったら、やれてないだろうなと。

※撮影と編集を担当した。監督は田島ハルコ(シャンプーハッツ)

ホリキリ:昔、頼まれ仕事でパンクしちゃったことがあって、結構トラウマになってるんです。それはノーギャラだったけど、そういう辛さというより、好きだと思ってやってたことが自分の思ってるほど好きじゃなかったっていうことが大きかった。できると思っていたけど、意外と体がついてこなくて。

カマクラ:なるほど、本音が、

ホリキリ:でちゃったですね。いや、これはまあ嘘かもですけど(笑)。その時は、完全に自分から言いだしたわけではなかったんです。今年やってるやつは、少なからず自発的にやっていますね。

カマクラ:映像に表れている気がします。全部楽しそうなんですよね。

ホリキリ:嬉しい。ありがとうございます。楽しそう、大事かも。自分たちが楽しけりゃいいじゃんっていうのが、重要なものの一つとしてある気がします。もちろんそれを客観的に判断はしなきゃいけないけど。どんなに売れている人も、最初は内輪があって、そこにどんどん入ってきたんだろうと思うんです。どんなに広がってる人でも。最初に絶対内輪があるから、それ見て、なんか楽しそうって思って入って来る。

カマクラ:ぱっと見わからないけど、よくよく見るとこの人すごく楽しんでるなって感じを、ホリキリさんの映像に感じます。

ホリキリ:それは嬉しい。

カマクラ:さっきのサンデーモーニングとかもそうだし、探偵物語とかも、撮ってる本人がたぶんこれは楽しんでるだろうと。

10.終わりに

ホリキリ:一人でインタビューされたの初めてですけど、ちょっと考えちゃったというか。たぶん今後インタビュー受けることないと思うんですよ。ははは。

カマクラ:そんなことないと思いますけど。

ホリキリ:なんだろう、例えば俺のことを検索してくれる人がいるとしたら、このインタビューを見ることになるんだなと。そう考えると、結構大事なことだと思うんです・・・。実はバイトで映画サイトやってたことがあってインタビューを自分がしたことはないんですけど、文字の編集だけとか、文字起こしとかやってたんです。

カマクラ:そうなんですか?へ〜。

ホリキリ:結構、大変だし。ぐちぐち文句言ってくる人とかいるので。その時はインタビュー受けたんだから、いいじゃんって思っていたけど、いざ自分がされると考えてしまいますね。まあでも、すごくありがたかったです。4割が嘘で申し訳なかったですけど。ははは・・・。

カマクラ:こちらこそありがとうございます。

スクリーンショット(2015-10-18 13.40.03)

※助監督をつとめた映画『ローリング』の公式サイトより。上映情報はこちら

http://horikirix.tumblr.com/

【第三回】副島正紀【ナイーブな生っぽい関係性】

最初に見たPVが、白くて長細めな部屋の中でバンドが演奏していて、たまに別場面で猫の被り物をした人が踊る、という強烈なものでした。実際に初対面したのはそれから1年ほど経ってからで、威勢のいい挨拶と、鋭い眼光に萎縮しまくったことをよく覚えています。副島監督にインタビューしました。

  1. 勢い
  2. 変化
  3. 映像である訳
  4. 「やけど」のPVについて
  5. アイドルのPV
  6. 音楽
  7. やりたいこと

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※9月12日、新宿(珈琲西武と中華料理屋)でお話を伺いました。

1.勢い

カマクラ:映像っていうのは、撮り始めたのは・・・。

ソエジマ:映像はですね、大学3年の時に撮り始めて。その前に僕、バンドやってたんですよ。

カマクラ:あ、そうなんですね。

ソエジマ:下北の251とか、渋谷の屋根裏とか、いろいろなとこで。普通のギターロックバンドみたいなのとか、いろいろやってて。ただ、やりながら才能ねえなとずっと思ってて。

カマクラ:ふーん・・・。

ソエジマ:そう。高校生の頃からやってたんですけど、ギターを始めたのは中一とかなんだよ。

カマクラ:へー!!

ソエジマ:音楽、ずっとやってたんですけど、でも大学3年くらいになって、一気にモチベーションがなくなってしまって。辞めて、そこから違うことをやりたいなと思い始めて、それで全然やったことない映像をやってみようかなと思った。そっからです。

カマクラ:何かきっかけはあったんですか?

ソエジマ:映画が好きだったんです。大学に行く時に、音楽はどこでもやろうと思っていたから、映画学校に行くか、大学受けるか、かなり悩んでいたんだけど。まあ映像も自分で撮れるんじゃないかなと思って、大学へ。音楽と映像、どっちもやりたかったけど、音楽諦めたから映像だけやってる。

カマクラ:なるほど。

ソエジマ:大学の時、自主映画を撮り始めました。作り方わかんないから本買ってそこでいろいろカメラの使い方とか覚えて、いきなり撮り始めた。

カマクラ:それは映画なんですね。ミュージックビデオとかじゃなくて。

ソエジマ:映画です。映画を撮り始めたんですよ。長尺の、映画を撮ろうと思って、80分くらいのをいきなり撮り始めた。撮れるんじゃないかなと思ったんですけど・・・一応一年かけて全部撮ったんですよ。

カマクラ:一年かけて!

ソエジマ:今ミュージックビデオを手伝ってもらってる、ピロリーナさんもそん時から一緒にやってます。まあ、作ってみたけど、全然つまんなくて、才能ねえなと思って。まあ、はじめはそんな感じでした。うまくいくわけないんだよね、今思うと。いきなり80分の映画を撮ろうとしても。知らないからできた。

カマクラ:なるほど。でも、映像は辞めなかったんですね。

ソエジマ:そうだね。映像もまあ、大学時代からそこまでモチベーションもってやってたわけではなくて。なんか映像も撮れるよね、みたいな感じで、たまに友達に頼まれて撮ったりとか。映像編集したりとか、先輩の結婚式のムービー作ったりとか、サークルやってる人たちの勧誘動画を作ってくれとか。そういうレベルで。ちゃんと自分の思想を持って撮ろうと思ったのは、ホントに大学卒業する間際ぐらい。

カマクラ:へ〜!それは映画ですか?

ソエジマ:いや、それは入江君(入江陽:シンガーソングライター、映画音楽家)の、”ペコ”という曲のミュージックビデオ。

カマクラ:YouTubeで見れるやつですね。

ソエジマ:見れます一応。入江君のペコを撮った時は、ミュージックビデオを撮りませんかみたいなことを入江が言って、じゃあ撮ってみるかみたいな感じ。そこから続けていくうちに広がってきたかなって感じです。

カマクラ:それはまだ二人とも大学生?

ソエジマ:それはね、もう働いてたかもしれない。両方とも。彼は仕事辞めてたかもしれないけど。なんか大学生の頃より、普通に働き始めてから映像に向き合うっていう。3年くらい前かな。ダラダラやってましたよ・・・。まあでも全然違うからね、映画とミュージックビデオっていうのは。ちゃんとした映画なんて撮ったことないですけど、やっぱり今映画を撮ろうと準備してるのに比べたら、意識が全然低かった。ミュージックビデオは勢いでも撮れるし。まあ、カメラさえあれば勢いで撮れちゃう。助監督もいらないし。音声さんもいらないし。まあ、勢いで始めて、勢いでやってるって感じかな。

2.変化

カマクラ:作品がちょっとずつ変わっていってるじゃないですか。

ソエジマ:そうかもしれない。

カマクラ:それは作っててどうですかね。すごくざっくりした質問で・・・。

ソエジマ:いやいや、そうだね、何で変わってるかって結構僕もずっと考えてるんですけど、物語性をどんどん排除したい、みたいな。結構今までは、まあ今までって言ってもホント最近までそうなんですけど、下手したら入江君の最新の”やけど”までそうなんだけど、彼の曲に対して、こっちがどういう解釈をして、作るかっていうようなスタンスだったんですよ。ミュージシャンが、持ってる音楽の中で言いたいことがいろいろあるとするじゃないですか。その一部を切り抜いて、僕はこう解釈したよっていう、もしかしたら彼が言わんとしていることの外かもしれないけど、僕の解釈はこうだよっていう感じで作っていたんです。

カマクラ:そうなんですね。ミュージシャン側のこういう世界観ですっていう言葉よりは・・・。

ソエジマ:そう、もちろんミュージシャンからNGが出ることもあるよ。それはちょっと違うんじゃないかって言われる時。その辺は話し合って決めるんだけど。要はミュージシャンが作り上げた音源を僕が勝手に解釈するみたいな、そういったところがあって。それって結構、作家的な活動じゃないですか。要は、原作があって、それに僕が脚本を書いていくという形。企画があって、それに対して脚本を書くみたいな。

カマクラ:ふんふん・・・。

ソエジマ:例えば、海で二人の人間が出会うみたいな感じの曲だったら、僕がその二人のキャラクターを作っていく作業みたいな。でも、今思考が向いてるのはそうじゃなくて、ミュージシャンにある程度僕が制限を加えて、状況設定して、それに対してミュージシャンがどういうようなリアクションをするかっていうことに・・・。

カマクラ:それは違いますよね。今までのものとは。ミュージックビデオはまず曲がありますもんね。

ソエジマ:だから、何ていうのかな、フリースタイルというか、限定はしてるんだけど、ミュージシャンの自由度をもっと高めてリアクションを広げるみたいな。あんまり、筋書きがあるようでない。Controversial SparkってバンドのPVの撮影の時は、下北沢の駅周りで撮ったんですよ。曲が4分くらいで、曲が始まってからRECボタンを押して、曲が終わる4分くらいでRECを終了するみたいな。で、歩くルートだけ決めてもらって、あとを追いかけて、そこにいろんなミュージシャンを配置していて、2分くらい経ったらここへ来てください、3分経ったらここへ、みたいに指示をする。僕が時間をカウントして、あとは自由に演じてもらうというようなものでした。

ソエジマ:すごく大変なんだけど、こっちの方が面白いなって思う。そういう所が結構変わって来ているのかなという気持ちはあります。

3.映像である訳

カマクラ:なんで映像を選ばれたんでしょうか。

ソエジマ:けっこうそれ、僕も考えてるんですけど・・・元々は音楽だったんだろうなと思うんです。最初に手に取ったのはギターだし。ただ、音楽だと自分の作りたいものを作れないなってことに気付いたんです。手段が違ったと思ってる。もしかしたら本で書けたかもしれないし、絵で描けたかもしれないけど。いろいろ自分の中で得意なものを探して行った時に、わかりやすいのが映像かなと。まあ、映像だってできるか何とも言えないんだけど、映像は一番、手に取りやすかった道具だったのかなって思います。別に、映像じゃなきゃダメだとは今でも思ってないよ。

4.「やけど」のPVについて

カマクラ:入江さんのやけどのPVは特に印象が強いです。どのように制作されたんでしょうか。

ソエジマ:やけどの撮影はいろいろ準備があってしんどかったんですよ。かなりこだわって作りました。半年ぐらい時間をかけて。なんで時間がかかったかというと、入江がP-VINEからアルバムを出すって話がちょうど並行していた時期です。やけどという曲が先にあって大谷さん(大谷能生:音楽家・批評家)がトラックを作っているという段階までいっていたかははっきりとは覚えてない。俺は頭の中でこういう舞台でやりたい、というのはあったんだけど、まだCDがどういうような流通で、どこがレーベルになるかも決まってなかったから、ちゃんと決まってから作った方がNGがでないので。作ってからNGが出るというのは辛いから、どういうビデオにするかっていうのを半年くらいずっと話し合っていた。

カマクラ:なかなか動き出せなかったんですね。

ソエジマ:そう、で僕はひたすら横浜の中華街に出向いてロケハンだけをしてるっていう状態だった。だからそれなりに、ちゃんと舞台設定も作り上げているし、結果的に慎重に作ったものになった。PVなんだけど、制作期間は映画みたいな感じかな。半年以上かけてるから。あれは作ってよかったなと思ってます。

カマクラ:かっこいいですよね。

ソエジマ:OMSBさんが出てくれたこともあると思うんだけど、再生回数伸びてるし。ちゃんと作ると、ちゃんと見てくれるんだなって改めて思いました。いい転機だったと思う。

カマクラ:やけどはどういう所を特にこだわったんですか?

ソエジマ:恋する惑星って見たことある?ウォン・カーウァイっていう監督の映画。

カマクラ:いえ、見たことないです。

ソエジマ:僕も入江もすごく好きで、アジアの映画なんだけど。台湾の実際のホテルとかを使って撮影してる映画で、アジアの熱気みたいなものがすごく良くて。やけどのPVにもそういうものを入れたいなと。入江と曲に関してかなり話し合っていたんだけど、僕はあの歌詞を読んだ時に、今いる地点からもう少し先にあるものを掴もうとする・・・、例えば、アイドルに憧れる女子高生でもいいんだけど、失うものがあるかもしれないけど、何か掴もうとする。入江だったら仕事辞めて何か掴もうとしたみたいな。その熱気をやけどって呼ぶんじゃないかなって解釈した感じだった。

カマクラ:うんうん・・・。

ソエジマ:でも、それをPVにすると、けっこうわかりやすいステレオタイプになるよね。

カマクラ:そうなんですか。どういうことですか?

ソエジマ:要は上京物語、地方を捨てて夢の町にいく、みたいなエモーショナルなものになってしまう心配があって、入江君って結構斜に構えてるでしょ。すごくはぐらかすじゃない。そのはぐらかしを、どう映像に表現したらいいのかって考えて。そういった時に、ストレートなサクセスストーリーを描いて、成功するようなものを描くんじゃなくて、やけどしたくてもやけどできない、みたいなものを描いた方が面白いんじゃないかなと思った。それをわかりやすくしようと思ったのは、人種的な壁とか、経済的な格差とか、そういったものをテーマにしようと思ったんだよね。

カマクラ:なるほど・・・。

ソエジマ:やけどしたくてもやけどできない人を描こうと思って。例えば入江君はやけどできる人だと思ってるんですよ。

カマクラ:やけどできる人。

ソエジマ:仕事を辞めて、彼は音楽っていう選択肢を体裁を無視すれば意志の力で手にすることができるじゃない。仕事を辞めて、音楽一本でやると決めれば、実現できる夢。しかし、あのやけどのPVに出てくる主人公の女の子いるじゃないですか。

カマクラ:はい。

ソエジマ:あの女の子って実は日本人じゃないっていう設定で、アジアっぽい感じの人。アジアに生きる、ちょっと金のない、大学でてサラリーマンになってみたいな人生ではなく、要は何もできない。中華料理屋でバイトしてるアジアの小娘って感じなんだけど、あの子はニューヨークに憧れてるって設定なんです。これはそうとう注意して見ないとわからないけど、あの子が映るシーンで、鏡越しに自由の女神とか、ちらっと見えたりする。あと彼女、飛行機持ってるじゃない。

カマクラ:イントロ部分で映りますね。

ソエジマ:彼女は、ニューヨークに行きたいっていう漠然とした夢があるんです。だけど、オモチャの飛行機を持ってて、飛びたいって希望はあるんだけど実際は飛べない。お金がなくて。ここじゃないキラキラしたどこかへ飛び立ちたいと思ってるっていうわかりやすいアイコンなんです。

カマクラ:なるほど〜・・・。

ソエジマ:ただあの子は実際は中華料理屋で働いてて、店主に怒られる日々。結局半径50センチの世界で生きてるっていう。最後のシーンでは自由の女神が背景に映るんだけど。

カマクラ:あ、そうですね。終わり近くにバックに映りますね。

ソエジマ:あれは横浜にあるラブホテルなんです。彼女にとってのニューヨークは結局行くことはできなくて、ラブホテルの自由の女神・・・つまりレプリカに最終的にたどり着く。本物にたどり着くことはできないっていうか。やけどはできない人。

カマクラ:ちょっと悲しいですね。

ソエジマ:それを、横浜横須賀って街の中で、入江陽やOMSBさんが、共有してる。一つの夜を慰めてるじゃないけど、なんだろう、みんなで一つの夜を過ごしているっていう。そんな話なんですよ。切ないんだけど、それがやけどの本質なんじゃないかなと思う。普通、人はやけどできないじゃないですか。

カマクラ:なかなかできないですよね。

ソエジマ:入江君みたいに、できちゃう人はいるけど、みんな音楽やりたいなと思いながら就職したり、僕は働きながら映像撮ってるし。どっちが正しいって話ではないんだけど、そういう一歩を踏み出せる人って少ないと思う。踏み出せない人、状況的に難しい人っていうのを映像で表現したのかなって思います。

カマクラ:なるほど・・・。

ソエジマ:あのPV、パッと見、暗いシーンが多いじゃないですか。

カマクラ:自販機の前で歌ってるとことか。

ソエジマ:あと、OMSBさんのラップが終わったあとに、真っ暗なとこあるじゃん。団地みたいなところ。あそこ超怒られたんだけど(笑)。

カマクラ:怒られたんですか。

ソエジマ:住人にくそ怒られた。まあそれは置いといて・・・全体的に暗いんだけど、何か掴み取ろうとしてる人。っていうのを撮りたかったかな。曲自身がもつ、本質というか、曲の言わんとしてることを入江と一緒に二人とも穴掘りながら探そうとしてる期間だった。あんだけ時間かけてってのはあまりないから。それがちゃんと再生されてるのは嬉しいです。

カマクラ:よかったですね。

ソエジマ;鎌倉は2日くらいで考えて撮ったからね。それでもいいんだけど。そう考えたら、ちゃんと撮ったPVかなって思うよ。

5.アイドルのPV

カマクラ:アイドルのPVを撮ってるんですよね。

ソエジマ:そうそう、アイドルのPVとかを撮っていると、女の子を可愛く撮るのが苦手だなと感じるかも。

カマクラ:それは何でですかね?

ソエジマ:ちゃんとはわからないけど、可愛いと思うポイントがずれてるんだと思うんです。可愛い女の子が崩れるところとかが好きで。

カマクラ:崩れるっていうのは体勢が崩れるってことですか?

ソエジマ:いや、顔が崩れるところ。クシャッとなる時というか。腹から笑ってる時とか。そういうの可愛いなと思っちゃう。だから僕がカットを選ぶと、他の人に見せると”これは悪意がありますよ〜”と言われてしまったり。そういうのを選んじゃう。僕は可愛いと思ってるんだけどね。

カマクラ:なるほど・・・。

ソエジマ:最近撮ったアイドルの話をすると、Peach sugar snowっていう山梨ご当地アイドルのPVを撮りました。彼女たちはタワレコの新しいレーベル(youthsource records)の立ち上げの際にそのレーベルからCDを出したアイドル。どう撮っていいのか、中々わからなかったな。

カマクラ:男を撮るより、女の人を撮る方が難しいってことでしょうか。

ソエジマ;うーん、難しくはないんだけど、みんなが欲しい映像は撮れないかなっていう。僕が解釈して撮っていいならいくらでも撮っていいんだけど。

カマクラ:それが周りとずれてるかもしれないってことですよね。

ソエジマ:実際にオファーをもらっても、断ってるものもあって。だから、あなたが欲しいものが撮れるかはわからないけど、それでもいいなら撮りますよ、ということかな。今までの僕の作ったものを見てくれて、本当に撮って欲しいと思ってるのかってことをちゃんと確認しないと。

カマクラ:それくらい強気というか、フラットに構えるのはとてもいいことだなと思います。

ソエジマ:いいお話をもらって、やろうと思った時にも、既に脚本があって、それがとてもさわやかな話だっていう風に聞いた時・・・実際都合が合わなくてそれは撮れなかったんだけど、僕が撮って果たしていいものになったか疑問だったな。

6.音楽

カマクラ:音楽に絡む映像を撮っていくのはこれからも・・・。

ソエジマ:そうだね。なぜなら音楽の力を信じてるからね!

カマクラ:かっこいい!それは重要ですね。

ソエジマ:音楽ってだって、理屈抜きに普遍的によかったりするじゃん。

カマクラ:ずっと前からありますもんね。

ソエジマ:僕がはっきり音楽の普遍的なパワーを感じたのは、日本のthe pillowsってバンドで。

カマクラ:ピロウズか〜。

ソエジマ:聞いてやべえってなって、そこからずっといろいろ聞いていて。また新しい転換があったのはクラッシュ。

カマクラ:昔のバンドですね。

ソエジマ:そうだね、ロンドンパンク。現状の体制を打ち負かそうとするパワーみたいなものとか、アンチソーシャルみたいな意思があるじゃない。アンチソーシャルなんだけど、この人たちはちゃんとイデオロギーを持ってるなと思って。こんな風に社会と戦う方法があるんだと知った時に、音楽の持つ普遍的な力みたいなものを感じて、それが好きだったから音楽やってたし。

カマクラ:ふんふん・・・。

ソエジマ:映像をやりながらも、僕は音楽の方が直接的だと思うんだよね。単純にアドレナリンが出る時間が長いかなっていう。60分のライブがもしあったとして、その中の20分すごくやべぇみたいな、こんな気持ちいいのないってなる。映画だと、見終わった後もやばいなとか、ある種の読了感みたいなものはあるけど、それってじわ〜っていうか。アドレナリンって感じではないよね。動物の持ってる根源的なものっていうか。ビートでぶち上がるとか。なんで俺、こんなに感動してるんだろうって思ったり。感動して、拳を突き上げてる自分がいたりするわけ。

カマクラ:けっこう、衝動的な部分ですよね。

ソエジマ:そうだね。映画ってのは文脈があるから感動したりするわけじゃん。今までの伏線があって、乾燥する。

カマクラ:じわっと。

ソエジマ:そういうのが映画の持つ力ではあると思うんだけど、僕はそこまで映画を解釈する力はなくて、その次元までいってないと思うんだけど、音楽はそれ以前というか。なんかわかんないけど、やべぇやつが4人ステージに立ってて、やばい曲をやってて、アドレナリンがでる〜みたいな。曲も歌詞もわかんないけど、感動して泣くってあるじゃん。

カマクラ:めちゃありますね!何に感動してるかわからなけど、やられるっていう時。

ソエジマ:なんなら、こいつ嫌いなのに、なんか泣いちゃってるみたいな。そういうのが、音楽の持つ力だと思うな〜。

7.やりたいこと

カマクラ:これから特にやっていきたいことを聞きたいです。

ソエジマ:ミュージックビデオかもしれないし、映画かもしれないけど、どちらかというとすごく実験的な映像を撮っていきたいって思うかな。さっき少し触れたけど、今まではずっと、脚本を書いてやっていたけど、もっと映像作家と音楽家っていう、ナイーブな生っぽい関係性をもって、作品を作っていきたいと思います。ミュージシャンが、自分の作った映像にタレント的に出てくれるっていう作品とか、ミュージシャンのために作る作品とかではなくて、ミュージシャンと映像作家が対等な地平のなかで、お互いの問題提起をしあうというか。

カマクラ:なるほど。

ソエジマ:だから、ドキュメンタリックな手法になるのかなと思うよ。

カマクラ;ただ、一般的なドキュメンタリーではないですね。

ソエジマ:そうだね。一般的なドキュメンタリーはミュージシャンのものだから。そういうのじゃないのかなって思う。松江哲明監督の「ライブテープ」とか、「トーキョードリフター」とか、最近で言うと三宅唱監督の「THE COCKPIT」とか。今言った作品みたいなものが、僕のやりたかったことだったんだろうなと思います。そういうジャンルを自分で切り開いていきたいなと思う。ここ2ヶ月くらいで思ったことだけどね。

カマクラ:おお、最近ですね。

ソエジマ:うん、それが一番興味あるかな・・・。ドキュメンタリーってどういう風に定義しようかなってずっと考えていて。撮る人間の影響を、撮られる側に与えてしまうじゃないですか。

カマクラ:そうですね、どうしても意識してしまう。

ソエジマ:いつものその人じゃなくなる。だから如何に意識させないかってところで、結局、演出が入ったその人になってしまうんだよね。

カマクラ:どれだけこっそり撮ったとしても・・・。

ソエジマ:完全に、隠しカメラで撮らない限りは、演出が入ってしまう。そもそもドキュメンタリーは、ちゃんと時間設定があった上で撮っていくもので、そうしないと映画にならない。僕は、できるだけ、その演出を少なくしたいというか。演者が見えないカメラで撮っていても、映画にはならないとも思うし。できるだけ自然に撮ろうっていう、観察映画っていうんだけど、それに対しては懐疑的なんです。

カマクラ:どう懐疑的なんですか?

ソエジマ:カメラをより見せない方向にいく映画というか、より自然な演技をさせようとする姿勢にたいして。

カマクラ:その姿勢に懐疑的なんですね。

ソエジマ:だって、カメラはあるじゃんっていう。カメラがある限り、人は絶対自然にはならない。監督が、こっからここを撮ろうってカメラを置いて、ずっと何もしないで観察してるだけって言ったって、カメラはあるわけだし、時間も決まってるだけだから。面白いかもしれないけど、僕はその手法は出発点が違うんじゃないかなって思ってます。

カマクラ:はい。

ソエジマ:だったら、カメラも置いて、場所も与えて、こういう実験っていうのを相手に見せようって思う。こういう実験をするんですよ、と。撮られる側は、それを聞いた上で、カメラを意識しながらどう振る舞うか考える。ただ、そのリアクションっていうのは、絶対に生のものだからね。手法としてはドキュメンタリーなんだけど、すごく実験的というか。結果的には演出の度合いのある映像を撮ろうと思ってます。

※副島監督はインタビュー時、謝礼が出ずに飯代は出る、ということを聞くと、陳麻飯と担々麺を一人前ずつ平らげてお帰りになりました。

副島正紀

映像作家、精神科医

Twitter:https://twitter.com/soemas

blog:昏迷する猫、瞑想し ~純粋音楽映画批判~

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【第二回】春田幸江【柱殴ってみたり】

あるライブのチラシのイラストを見て春田さんのことを知りました。いい絵だなと思っていたら、次に見た春田さんの絵が全然違う人のような作品でびっくりしてしまいました。私カマクラくんも小さい頃から絵を描くのが好きだった、ということもあり、春田さんの話をいろいろと聞きたくなりました。

目次
  1. 発色がいい!
  2. エクストリーム
  3. 小学校
  4. 絵を見る
  5. 青春

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取材後に春田さんが描いてくれたイラスト

※9月8日(火) 渋谷某所、三軒茶屋デニーズでお話をお伺いしました。

1. 発色がいい!

カマクラ:小さい頃に絵を描いた思い出とか聞きたいです。

春田:そうですね、一番古い、なんか絵を描いたなという記憶は幼稚園ぐらいだと思うんですけど・・・。生まれは大阪で中一まで大阪にいたんですけど、

カマクラ:はい。

春田:それで大阪時代、幼稚園行ってた頃に、自宅の畳とか敷いてある和室の部屋で、低いちゃぶ台みたいのが置いてあるんですよ。そのちゃぶ台の下に体を滑り込ませて、潜り込むとコーティングされていない板が目の前にあるわけです。

カマクラ:ちゃぶ台の裏ってことですよね。

春田:ちゃぶ台の裏を見てて、あ、なんにも描いてない所があるぞ、って思って・・・なんだろう、どういう動きでそうなったかわからないんですけど。落書きとかは、お母さんから紙もらったりとかしてB5とかの紙に描いてたんだけど、自分がいつも描いてるサイズ・・・よりもはるかに大きな、自分の体くらいの大きさの板が・・・。

カマクラ:・・・。

春田:ムズムズして、そこにマジックで落書きをギューっと、寝そべって描いて。それが楽しかったのをよく覚えています。

カマクラ:へ〜。

春田:普通の話ですね。子供の頃ってイタズラ描きして怒られるじゃないですか。今仕事で絵を描く人に限らず子供の頃の体験としてよくあるかなと。

カマクラ:みんなやって怒られてると思います。

春田:とにかく今まで描いたことがない大きさ。壁とか・・・あ、だんだん思い出してきました。普通に壁とかに描いちゃうと、すぐ母親に見つかって怒られたりとかして。こんなところに描くんじゃないよって。でも大きいスペースに描きたいという欲望はどうもあったらしく、それでちゃぶ台の裏にこっそり隠れて描いた。

カマクラ:見えないですもんね。

春田:そうそう、実際しばらく気づかれなかった。あと絵を描くとき普通は自分が上で紙が下だけど、寝そべってるから上下逆さで、逆さでも描ける!宇宙みたい!とか、不思議を発見して、その時一人だった。という記憶。絵の話、割と子供時代の話になっちゃいますけど。

カマクラ:あ、聞きたいです。どんなどんな・・・。

春田:・・・えーと、大阪時代家自体がこう、金持ちじゃなくて、だからといって雨漏りしてるとかそこまで貧乏でもないんですけど、なんでもかんでも買ってもらえる家ではなくて。1977年生まれなんで、自分がちょうど小学校上がったぐらいが、アニメとかメチャやってて、テレビつけると。70年代とか60年代とかのアニメの再放送とか。

カマクラ:どんなアニメやってたんですか?

春田:巨人の星とか。黄金バットとか。ガンダムもうる星やつらも。とにかくいっぱい。リアルタイムで80年代アニメとかも毎日朝から晩までバンバンやってて。そういうアニメもあるし、漫画もちょうどジャンプが黄金期と呼ばれていた時代で、ドラゴンボールとか北斗の拳とか、普通に連載で読めるんですよ。

カマクラ:へ〜。

春田:アニメと漫画でうわ〜ってなって、そうなってくると見た絵とかまねして描いたりとかしたくなって、描きたいんですけど、学校のノート以外基本買ってもらえないんですよ。ほら、スケッチブックだよ画用紙だよ、みたいな感じじゃなくて、とりあえずあるものでやって、みたいな感じで。

カマクラ:はい。

春田:新聞とってるから、それにいつも広告が入ってるんですよ。チラシが。スーパーのチラシとか不動産のチラシとか。そういうのがごっそり入ってきて、探すと裏が何にも描いてないやつがあって。それをせっせと集めて、なんか自分なりの”何をしてもいい紙”みたいなのをためるわけです。それしかないから。

カマクラ:・・・。

春田:たまにうまいこといくと、自由帳とか買ってもらえたりするんですけど。それは特例で、基本そういうチラシの裏とかに。今言わない・・・いや言いますけどチラ裏ですね。

カマクラ:チラ裏・・・。チラシを見て、両面印刷だとガッカリするっていう感じですか?

春田:そうそれそれ。

カマクラ:僕もそうでした。

春田:ですよね、何だよこれっ!て。私、今回たぶん小学生時代に話が集約されちゃうかもしれないですけど、自分の基本的なものが小学生時代に形成されちゃってるので。その、めっちゃディティールの話ですけど、チラシをためて、そのチラシの紙の素材もいろいろあって。

カマクラ:そうですよね。

春田:さらっとしてるのと、ツルッツルのやつが・・・!

カマクラ:どっちが好きでした?

春田:さらっとしたやつがベストなんですけど。

カマクラ:ツルッツルのやつ、描きにくくないですか?

春田:そう、子供だから基本描くときに鉛筆で、ツルッツルのやつは芯のコナが引っかからないから描けなくて。さらさらのやつに鉛筆で描くっていうのを楽しんでいたんですけど、私がそうやって絵をわさわさ勝手に描いてるのを母親が発見して、たまに水性ペンとか買ってくれるようになって。カラーの。

カマクラ:あ〜、サインペンみたいなやつ。

春田:その水性ペンだと、さらさらのやつより、ツルッツルのやつのほうが・・・。

カマクラ:よく描けるんですか?

春田:・・・発色がいいんですよ。

カマクラ:はっしょく・・・、ははは。

春田:ははは・・・。

カマクラ:よく描けるというより、発色がいいんですね。

春田:違うな、と思って。染み込まないわ、コレ・・・。

カマクラ:ははは・・・!なんか目覚めですね。

春田:ははは・・・。そう、画材への。そういうことに興奮するっていうか、それだけですよ。

カマクラ:それは幸せですね・・・!

春田:いろいろ試してる時に何か発見する瞬間がものすごく楽しくて。あと、さらさらの紙だとだいたい紙が黄色とかピンクとかカラーで、ツルッツルのは白が多いんですよ。

カマクラ:ツルッツルはほぼ白だったような気がします。

春田:だから、やっぱり白い所にね。美しいわけです。

2. エクストリーム

春田:小学生男子は、エクストリームじゃないですか。

カマクラ:いや、わからないです。全然(笑)。

春田:ははは・・・。そうですね、大阪に住んでて家のそばに住んでる友達、一緒に集団登校する子たちがほとんど男の子ばっかりだったんです。兄弟も、弟がいるんですけど、一番よく遊んでいた隣の家の子も男の子兄弟で、周りに男の子が多かったんですよ。

カマクラ:ふんふん。

春田:で、家近いから遊ぶとか、それぐらいの理由で遊ぶじゃないですか。

カマクラ:そうですね。

春田:それで、男の子文化の方が普通っていうか、逆に小学校あがって、女の子がスカートとか履いてたり、小綺麗にしてるのを見てビックリするみたいな。なんかお姫様みたいな子がいるぞ、と思って。自分がそうじゃないことにコンプレックスを感じたり。基本男の子と遊んでました。テレビアニメも・・・。

カマクラ:ドラゴンボールとかおっしゃってましたもんね。

春田;そうそう、ドラゴンボールとか北斗の拳とか、キン肉マンとか。その時、少年漫画、少女漫画の区別もわかってないんですけど、だいたい少年漫画っぽいものばかり摂取してました。

カマクラ:そうなんですね。へ〜・・・。

春田:なんでしょう、住んでた地域が、工業地帯っぽいところっていうか。大阪の中心部から見て北のほう、淀川渡って向こう側で。家の近所に小さい町工場とか、住宅地に隣接してポコポコいっぱいあるみたいな所で、歩いているとなんか、工場の外に謎の鉄クズの山が背よりも高く積み上がってたりとか。子供だからそういうの手にとっては興味津々で、そういうのもあって結構家の近所で遊んだりとかする中で・・・。

カマクラ:はい。

春田:近所の男の子とワケのわからない遊びをよくしてた・・・。で、カマクラくんとお話するのでエクストリームな話をしたいなと思って。この話なんとなくした方がいいかなと思って。わかんないですけど・・・。

カマクラ:ぜひぜひ。

春田:家の近所に住んでる、ホッタ君って男の子がいて。ホッタ君ちの外に、ある日急にタンスとか机とか家具が並べられ始めて”何、引越しするの?”って聞いたら、”うんうん、俺んち建て替えんだよ”って言って。

カマクラ:建て替える・・・。

春田;”そうなんだ、いいね”とか言ってて。その荷物を運び終えたらしく、ホッタ家の旧邸はまだ建ってるんですけどすっからかんで、ホッタ君がそこに自分の友達を集めだして。急に。

カマクラ:え〜!

春田:空き家に。私も近所に住んでたから、来る?とか言われて。

カマクラ:誘われた!

春田:そうそう。これは何か始まるなと思って、血が騒ぎましたね。そしたら”俺んち、どうせ壊すからさ、みんなで先に壊そうぜ”って。

カマクラ:マジっすか〜。ヤバイなそいつ。ふふふ・・・。

春田:ははは・・・。

カマクラ:合理主義っていうか。理にかなってます。

春田:かなってるでしょ。ホントだ、と思って。

カマクラ:それでホントだって思って、春田さんも壊しに・・・行ったんですか?

春田:行った。

カマクラ:ははは・・・!

春田:そうなると皆、手に手に各々の破壊道具を・・・。ははは。

カマクラ;ははは・・・!正直っすね。

春田:私も父親が職人さんだったんで、家に大工道具みたいな、丸ノコとかドリルとか工具すごいあって、で、トンカチを片手に持って。軽くニヤっとした小学生たちが空き家へ・・・。たぶん、生活たいへんだったり家庭の事情いろいろある子だったりエクストリームな環境の子が普通によくいて。まわりの大人も、近所の悪ガキの動向はチェックして面倒みてたので、危ないこと見つかると怒られちゃうんで、まあ大人の目を盗みつつこっそり。トレーナーの下に隠したりして。

カマクラ:ホッタ君の旧邸へ。

春田:何食わぬ顔で。それで、子供なりの物理的な考え方っていうか、一階から先に壊すと上が落ちてきちゃうから、まず二階を壊そうということになって。

カマクラ;マジで壊す気だ。

春田:それで男子がやるぞ〜って。二階は和室が二間続いていて、真ん中の襖というか引き戸というか、ペラペラの仕切りがあって。その襖にドロップキックする人とか、障子を手当たり次第手刀で突いてる人とか、おもいおもいに壊し始めてめちゃめちゃ楽しくて。

カマクラ:楽しそう。

春田:私もこれ壊せるかな、って柱殴ってみたり。

カマクラ:みんな周りは男の子ですか?女の子は春田さんだけ?

春田:その旧ホッタ邸の件に関しては私だけですね。で、天井裏とかあがったりして、ボコボコにしてやろうぜ!みたいな。キャッキャいってすごい遊びまわってたら、ホッタ君の家の人が様子見に来ちゃって。それですぐバレて、すごい怒られるっていう。

カマクラ:ははは、怒られたのは全員ですか?

春田:まず、張本人ですね。ホッタ君自身が家の人に連行されちゃって。すばやい子はいつのまにかいなくて、逃げるタイミングのがす子はおこられて。これ俺たち良くないことしちゃったってショボンとして、なんとなくその・・・散るっていう。

カマクラ:え〜!

春田:なんとなく、みんな帰りました。わずか30分ぐらいで凄い楽しさと罪悪感、最後無言で解散、もうなんとも言えない気持ち。面白いっていうか、限界を知らないかんじというか・・・話したかったです。なぜかわからないですけども。エクストリームの言葉の意味ちゃんと調べたほうがいいような。

カマクラ:いや、春田さんの思ってるやつでいいと思います。

春田:どんくらい高い塀から飛び降りれるかとか、そういう感じ。やってました?

カマクラ:やってました、やってました。

春田:女の子の友達もできて、そっと遊んでみたりするんですけど、全く別な遊びなんですよ。どっちかっていうと、当時の私には男の子の遊びのほうが発見が多くて面白かった。絵とか漫画とか描いて、男の子にウケたっていうので、男子遊びに混ざっても女だからといって排斥されなかったのがありがたかった。まあなんとなく、居ていいよっていう緩い感じ。後ろのほうになんとなくいる。

3. 小学校

カマクラ:漫画を描いて見せていたんですよね。どういう漫画ですか?

春田:何年生かもうわかんないんですけど、4年生か5年生だったかな。ササキ君って男の子が漫画を描いてて。ササキ君は・・・ヨッシマンって呼ばれてたんですけど、ヨッシマンの漫画は面白いってなってて。

カマクラ:流行ってたんですね。

春田:クラスで好評連載中だったんです。私もヨッシマンの漫画を読ませてもらって、それにインスパイアされた漫画を自分も描き始めて。それを、クラスで誰かが漫画を描いたら読みたい人たちがいるから、見せてみたら、以外とウケたっていう感じ。

カマクラ:なるほど。

春田:オリジナルキャラクター作ったりとかはせずに。まずササキ君の漫画がクラスメイトが出てきて大暴れするみたいなので、あ〜おもしろいって思って。漫画の中だったら人殺していいんだ、みたいな。女の子達の集まりでは浮いていたんですが、友達になってくれた女の子がいて、その子と自分をキャラ化して、あとはクラスの男子とか、読んだ漫画のキャラクターとかがいっぱい出てくる漫画でした。ハイスクール奇面組とか好きだったんで、普通に奇面組の人が出てきてみんなで一緒にサッカーやったり殺人事件解決したりとか。

カマクラ:へ〜。

春田:思いついたことなんでも描いてました。人が熱唱してて間奏に入ったときに人間の分子がバラバラに崩壊してアメーバみたいになってでもサビで復活するギャグとか、ギャグ漫画。弟も出して弟にも読ませたり。しばらく描いてなかったら続きは?とか言われて嬉しくて、ホントにめっちゃ描いてたんですよ。毎日描いてた。基本学習ノートしか買ってもらえないんですけど、もう学習ノートに描けばいいんだと思って、漢字練習帳とか青い線入っちゃってますけど、ベース白いんで。そういうものをどんどん消費して描きまくってました。

カマクラ:楽しいですね。

春田:ノートを積み上げるとかなりの高さになる。描いては友達に見せ、めちゃくちゃ笑ってくれる、ツボの浅い子とかプルプルしてるのとか見るのがホントに嬉しくて。なんかよくわからないけど、すごい楽しいって。描いてる最中も面白いんですけど、人が見てくれた時に反応があるんで、それでかなりハマっていました。

カマクラ:小学校4年生くらいですね。

春田:そう、4年~6年の間。学校でもそうやってなんとか居場所があったんで。ベースは家の近所で遊んでるんですけど、でもみんな学年違ったりクラス違ったりするんで、学校行くとバラけるじゃないですか。

カマクラ:そうですね、関係なくなっちゃいますよね。

春田:そうそう、で、縄張りの外で果たして自分の居場所作れるのかっていうのは小学校通してのテーマだったと思うんですけど、なんとかかんとか。漫画でなんとかなった。

4. 絵を見る

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’15/09/19 – 荻窪ベルベットサン ケモノディスクライブ第五回 入江陽 『ピアノ弾き語りライブ〜誕生日のワガママ〜』のフライヤー用の絵。

※絵を見せていただきながらのお話です。

春田:なんか絵を描いたあとに、コピーとるの好きで。コピーとると、整理されるというか。生々しいものが薄い一層へだてた向こう側に行くというか。

カマクラ:僕もそれやったことあります。こんな素晴らしい絵じゃないけど。

春田:全部手描きなので修正液の後とか消えなかった鉛筆の線とか痕跡を残しつつ、出来上がったもの見ると、たまに怖いなこれ〜とか思ったり。以外と、印刷するとスッキリするので、怖めでもいいんじゃないかとか、研究中ですね。この絵の場合は1.5倍くらいに拡大したやつのほうが安心して見れました。

カマクラ:ふ〜ん・・・。安心して見れるってどういうことですか?

春田:個人的なものから遠のいた感じというか。拡大して紙に収まらなくて絵が切れた状態とか。なんて言えばいいのか。その辺ちょっと上手く言えないです。

カマクラ:絵によって、タッチとか全然違いますよね。

春田:固定できないんですよ。これはこれが正解だからこれ、みたいな感じで。振り分けて描くので、だからどんな絵を描いてるんですか?とかどんな漫画ですか?って言われると、ものすごい困るんです。全然説明できない。

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西條奈加『刑罰0号』最新回挿絵。(「読楽」2015年10月号掲載/徳間書店)

カマクラ:やばいなこれ。

春田:よかったよかった。連載小説の挿絵です。小説の世界の絵。これは、自分の力ではないというか、こんなに普段描けないので。ヤバイのできたなってこれはちょっと思いました。

カマクラ:これはショックが大きいです。

春田:今まで蓄積してきたものがいい形で出たなと思ったんです。奇跡的に。仕事の絵でちゃんとだせたんでよかったと。

カマクラ:素晴らしいですね。

春田:よかった!って嬉しいんですけど、そうなってていいのかな?と思います。奇跡の産物で。絵の学校行ってないから、どこかでたらめですけど、なんかできた!とかで。

カマクラ:我流ですね。

春田:超我流です。

カマクラ:我流でここまでできるんだ。

春田:できるできる。でも、トレーニング積んでないぶん整合性とれてる感じにするのに時間めちゃくちゃかかりました。描くのものすごく遅いんですよ。

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カマクラ:これは何ですか?

春田:これは週刊文春に大谷能生さんの記事が載ってたんですよ。それの模写。

カマクラ:え〜!記事の模写ですか?

春田:そう。全部一緒。ホント意味わかんないんですけどこういうことしちゃうんですよ。

カマクラ:やばいな〜これ。

春田:読めるでしょ。ちゃんと内容が。

カマクラ:”気鋭の批評家であり、近くニュー・アルバム『JAZZ ABSTRACTIONS』をリリースするなど”・・・。普通に記事だし。でも、絵ですね。こうなると文字も絵だし。

春田:子供の時とかも、単行本の表紙とかそのまま模写したりとかしてて。これいいなと思ったら模写するみたいな。原本とできた模写を並べて見比べて面白がったり、なんかそういう。遊びの一種です。

カマクラ:こういうのすごく共感します。面白い。ページ数も書いてあるし。しかもこの、下の広告まで・・・。

春田:健康チェックってところを模写しながら、私、頭大丈夫かな?とか思ったりして・・・そこで止めたっていう。

カマクラ:ははは・・・。

春田:笑ってもらえてありがたいです。これ系なかなか人にみてもらえる機会ないので。こういうものペロッとホームページに載せる意味あるのか私まだよく理解できてなくて、twitterだと流れて消えてっちゃうから、今ブログはじめて、意味あるものと並べてなんとなく見比べたりして。

カマクラ:普通は目的わからないですからね、模写する意味とか。なんで?ってやっぱり思うから。

春田:単純に暇だったからやった。

カマクラ:そうなんですよね。

春田:そうそう、なんか病的な何かってのは特になくて・・・あるんですかね?

カマクラ:いや、たぶん病的な何かとかはないと思います。

春田:救われる一言だ!

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ドキュメンタリー・ライヴハウスact.6 新春Special『ジョン・ケージメモリアルB.B.Q』

春田:ロゴだけです。ディレクションが吉田アミさんで、「あのジョン・ケージだ!とかビビらずアッホみたいなロゴ描いてください!」って感じで笑かされて、3分ぐらいで描きました。どうなるのか全然わかんなかったんですけども、吉田さんとデザイナーの竹田さんのセンスがすばらしくて、出来上がり見てこういうのがプロか!と感動して。ロゴだけ見るとふざけてる落書きですね。キレのいい感覚で素早くすくいとって上手に生かしてもらえて、ちゃんとした仕事の一部になって。一人でできることじゃないですね。勉強になったし、これすごく嬉しかったです。

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大谷能生7DAYS@荻窪ベルベットサンのDM

春田:2012年に上京して、はじめて使ってもらえた絵がこれです。7日間で21公演もあって、出演者の方めちゃくちゃたくさん。どうしようかと思って。生きてる人は興味を持って出向けば会えるので、今会えない人を描こうってして、朝の講義でテーマとして取り上げられる昔の作曲家の人達にして。あと、本業で一筋とおっている方々がカレー職人として日替わりで呼ばれてたんですよ。ステージでなくキッチンの方に。カレー7個描きたかったんですけど構成できなくて、大谷さんに配膳されるであろう1個にしたらおさまって。できた!と思って。ビジュアルもう一種類、店長が作った大谷さんの写真をコラージュして7人いるのがあって、ポップですごいカワイイんですよ。あれが陽でこっちが陰でやってることが逆で。大谷さんが主役なのにシルエットで描いて死者と物に焦点あてて、いいのか?と進めながら悩みまくってたので。あれがあってすごく安心できました。

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春田:絵の話は物がないとできないのでばばっと持ってきました。原画なかったり、なくしたり。こういう落書きとか使い終わったやつとか。どれか一つをとって、ああ、こういうのを描くんですねと言われると、そうなんですけどそういうわけじゃないというか。

カマクラ:いろんなタッチで描けるとまた苦労がありそうですね。

春田:描けるというか調節きかないんです。仕事、相手が欲しいものとどうやって摺り合せるかっていうのがあると仕事もらうようになってからわかって。描けるもの全部であたるしかない感じです。今は、あまり考えすぎず、えいってやるようにして。あと、自分さえよければって描き散らさず、冷静に描けたら、もう少しコクのあるものになるかもなとか。二十代半ばから上京直前まで絵をほぼ描けなくなってたので、経験値の低さに苦労してます。苦労の経験からいうと苦労じゃないか。うまくなりたい。

5. 青春

春田:今は楽しいです。さっき言ってたキャッキャ遊んでる感じと、全く同時にものすごく辛かったんで、大人になるまで生きれる気がしない、どうしようみたいな。今天国。

カマクラ:ふ〜ん・・・。

春田:キチガイな部分を、癒すために絵とか漫画とか描いてる部分、いやですけどあるなと。いやでも事実ですけどいやですけど。

カマクラ:うんうん、でもそういうところ、たくさんの人にあるんじゃないですかね?音楽で癒すとか。

春田:ありますね。音楽好きですし、漫画もアニメもそうだし。誰かが作ったものに癒されたり力をもらってます。音楽つくれないから、ミュージシャンの人達に憧れもあるし。みんなを楽しくする人達。みんな尊敬してます。

カマクラ:いいですね。

春田:ただ、尊敬してるだけだと情けなくなったり。

カマクラ:そんなこと思わなくていいんじゃないですか・・・(笑)。

春田:これ、インタビューというかカウンセリングですよね。無意識ダダ漏れでごめんなさい。(笑)

 

春田幸江 ( 絵 / 漫画 )

大 阪 府 出 身

愛 知 県 育 ち

東 京 都 在 住

http://harutasi.blog.fc2.com/

【第一回】剤電 (ザイデン)【祝】

物語を作り、それに合った音楽を作る、シンガーソングライターともトラックメイカーとも言えそうな異色音楽家。ザイデンさんのダークで何故か明るさも感じる音楽に興味を持ち、私カマクラくんはインタビューをすることにしました。

目次

  1. ザイデニズム
  2. 聞き始め
  3. やり始め
  4. 追いつかない
  5. 千葉の団地・日本の団地
  6. 団地とは?
  7. これから

※2015年8月9日、新大久保にてお話を伺いました。

剤電 (ザイデン)さんとは・・・御本人による自己紹介:1人でごちゃごちゃした音楽を作ったり、バンドをやったり、即興したり、サントラ作ったりしています。BMIが上がりません。

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1. ザイデニズム

ザイデン:ゲームすごい好きでした。クーロンズゲートっていうゲームが超好きで・・・。クーロンズゲートはかなり、ザイデニズムがあります。

カマクラ:ザイデニズム・・・自分で言うか〜!

ザイデン:ザイデニズムです。

カマクラ:ザイデニズム。

ザイデン:たぶん、見てみればわかります、クーロンズゲート・・・。

2. 聞き始め

ザイデン:もともと映画が好きでした。祖父が、隠居したあとに唯一の楽しみだったのがWOWOWで映画を録ることだったんです。仕事辞めてから、ずっと家に引きこもってビデオを録画してたんですよ。それで、毎週じいちゃんの家に行ってたんですけど、毎回見せてくれたんです。毎週、ジャンル問わずに。

カマクラ:それって何歳くらいの時ですか?

ザイデン:3歳くらいですね。3歳くらいから、17歳くらいの時までほとんど毎週行ってたんで。毎回違う映画を見せてくれたというか、見せられたというか。これ、見ない?とか言うわけでもなく、勝手に流すんですよ。

カマクラ:なるほど。

ザイデン:それを、必然的に見ることになって。じいちゃんが死んでから、そのベータのビデオテープがすごい余っちゃって。ベータってもう見れないんですよね。

カマクラ:VHSの前のやつですか?

ザイデン:そうです。今もじいちゃん家の地下に大量のベータが眠っていて。すごいことになってて・・・。すごいコレクション。ただ、今はベータの再生機がほとんど手に入らないので・・・。

カマクラ:見たくても見れない感じ。

ザイデン:そう、見れなくて。とりあえず、それの影響がすごいです。映画は小さい時から好きで。特に、ディズニーですね。ディズニーのアニメとか見せられて。

カマクラ:まあ、見せられたというか、見てるから見ようよ、という感じですか?

ザイデン:そうですね。「ミッキーとドナルド」って番組をWOWOWでやってて、それを毎週録画して見せてくれたりもしました。

カマクラ:それ!見たことあります。俺もそれ、WOWOWで見てました。結構昔のやつですよね。

ザイデン:そう、たまに最近のもやるんです。短編を何個かやるっていう。

カマクラ:ザイデンさんの音楽、言われみるとディズニーっぽさすごくあるな、と思います。

ザイデン:はい。僕の曲、結構ディズニーっぽいと自分で思ってます。小松成彰さん(音楽家。横浜中華街スピリチュアル占いとパワーアクセサリーのお店『Maila』に所属している。KING KONG JAPANという別名で曲を作ったり、エレファントノイズカシマシというバンドでザイデンとも共演中)ってご存知ですか?

カマクラ:はい!

ザイデン:小松さんに同じ話をしたら、わかる!超ディズニーっぽいよね!って言われて。ただ、ディズニーが好きだったって言うと、結構みんな”えー!”って感じになるんですけど。

カマクラ:ディズニーの楽しい感じが、根本に流れてる感じがしました。

ザイデン:あとは、ターミネーターとか。レーザーディスクがあったんですよ。ターミネーター2とか、プレデターとか・・・ああいうの今でも好きですね。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:あと、雨宮慶太さんっていう特撮の監督がいて、その人がやってたゼイラムっていう映画。2まであって、4歳くらいの時にじいちゃんに見せられて、それが未だに残ってます。かなり、核というか、そこで使われてる音楽もめちゃめちゃカッコよくて。ビジュアルもすごく独特で、かなり影響受けています。

カマクラ:4歳くらいの時に見たゼイラム。4歳って早いな・・・。

ザイデン:あと、サントラとかめちゃ聞いてました。TSUTAYAで借りたりして、SFものとか。小中学生ころですね。あと、その頃ちょうど癒しが流行っていて・・・。

カマクラ:癒し!流行りましたね。

ザイデン:フィールっていう、ヒーリングミュージック、癒しを得られる音楽のオムニバスがありました。それを親が買ってきていて、よく聞いていました。アディエマスって知ってます?

カマクラ:いや、知らないです。教えてください。

ザイデン:ソフトマシーンってバンドをやっていたカール・ジェンキンスって人がやっていた合唱団みたいなやつで。それとか、エニグマっていう・・・。

カマクラ:エニグマ?

ザイデン:はい。ドイツのグレゴリオ聖歌と、ダンスミュージックを合わせたグループとか・・・。あと、姫神、ご存知ですか?

カマクラ:いや、わからないです。でもどんどん話してほしいです。

ザイデン:ほんとですか?姫神っていう、もう死んじゃったんですけど。あと、ポルトガルのマドレデウスっていうグループ、かなり入ってます。マドレウス超カッコいいんで、ほんとにオススメです。

カマクラ:ふーん、マドレデウス・・。ありがとうございます。

ザイデン:ポップスと、ポルトガルの伝統音楽のファドっていうのを合わせたバンドで、ホントに泣きそうになります。結構僕、そういうヨーロッパの民謡とか好きで。ちょっとこれはニワカと思ってるんですけど。プログレとかも好きです。

カマクラ:どれもホントに好きそうだ・・・。

ザイデン:音楽は、サントラとヒーリングミュージックと、という感じです。いわゆるバンドとかを聞き始めたのは、中三くらいかな・・・。パンクが好きになってしまいまして。

カマクラ:パンクネスはザイデンさんからひしひしと感じます。

ザイデン:超ありますね。70年代のパンクが好きで、そこからいろいろTSUTAYAとかで聞き始めました。

3. やり始め

カマクラ:楽器は最初何から始めたのですか?

ザイデン:ベースです(食べ始めたパスタに粉チーズを大量にかける)。

カマクラ:わ、めっちゃかける!!

ザイデン:かけ過ぎました。パンクはまって、そっからニューウェーブとか聞き始めて。ジャパンっていうイギリスのバンド、今でも大好きなんですけど、そのベースをやっててもう死んじゃったミック・カーンってやつが、フレットレスベースを使ってました。それを聞いてなんか、すごい衝撃を受けて・・・。めっちゃ凄い音だしてる、と。ミック・カーンに憧れてベースを始めたって人が日本に大量にいると思うんですけど、僕もそういう感じでした。

カマクラ:ふんふん・・・。

ザイデン:それで、高校の時に軽音楽部に入って、学校一のブスと、太陽族のコピバン組まされたんですけど・・・。学校一のブスというのがすごい重要で。

カマクラ:学校一なんだ・・。

ザイデン:珍獣って呼ばれてたその人と、学年で唯一のゲイと、一緒にバンドを組まされて。

カマクラ:組まされてってどういうことですか?

ザイデン:強制的に組まされちゃうんですよ、軽音楽部。太陽族って青春パンクのコピバン組まされて、速攻でやめて、そこからはバンド全然やらなかったです。22歳になるまで、バンドやってないです。

カマクラ:22っていうと、2、3年前ですね!かなり最近まで。

ザイデン:そこからはずっと、一人で家でベースの練習してました。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:高校時代の思い出が、ベースの練習してたことと、BOOKOFFにいたことしかない。何にもしてませんでした。大学入っても似た感じです。大学入ってから、一瞬組んだんですけどすぐ解散ていうか、ダメになっちゃって。

カマクラ:・・・。

ザイデン:で、大学が映画とかの学校だったんですけど、そこでバンドはやってないけど、一応音楽やってるんだったら、ということで友達の自主製作映画のサントラをずっと作ってて。僕がサントラとか舞台の音楽とか作ったりしてるのはそこが出発点です。

カマクラ:なるほど。

ザイデン:20歳くらいのころからずっと頼まれて作ってたんです。だから、音楽を作り始めた原点は、人のサントラです。バンドもやってなかったし。ちなみに初めて作ったサントラは、特撮です。

カマクラ:特撮・・・?

ザイデン:うちの大学に特撮部があって、そこの自主製作映画のサントラです。ちょうどそのころヒップホップにはまってて、サントラも全部そんな感じになって作り直されたりしましたけど。そこから、ずっとサントラを作っています。2011年、大学四年の時は超やばくて、卒論書けないくらいサントラ作ってました。それで、卒業できなかったんですけど・・・。

カマクラ:中退ってことですか?

ザイデン:いえ、6年生までいて、多分卒業はしてると思います。証書はもらってなくて・・・。ずっとサントラでした。あとは舞台とか。失礼なんですけど、超劣化版三谷幸喜みたいな舞台の音楽作ったりしてました。

カマクラ:なるほど、自分で作り始めたというより、まず注文が来て、それでやり始めたっていう感じだ。

ザイデン:受け身です。綾波レイです、綾波レイ系です。

カマクラ:ははは・・・。ただ、ザイデンさんはパッと見、とても受け身には見えないので面白いです。どんどん自分から作ってるように見えるけど、もともとは頼まれて作ってる。

ザイデン:頼まれないと、作れなくて・・・。そうやってずっとサントラ作ってたんですけど、仲よかった先生が唯一大学にいて、現代音楽とか教えてもらったりするんですど、その人が、金にならない学生の自主制作映画のサントラとかやっても楽しくないし疲れちゃうだけだから、もっと自分の音楽やったほうがいいよ、と言ってくれて。ザイデンっていうソロをはじめたのは、その一言からだったんです。

カマクラ:なるほど・・・。

ザイデン:その先生の言葉を聞いて、やっと一人で作り始めて・・・それも発表とか形になったのは2012年ぐらいで、この年はちょうど大学留年した年だったんですけど、初めてちゃんとバンド組んだりしました。そこから今に至る感じです。

カマクラ:大学留年した年が、制作のキーポイントだったんですね。

ザイデン:そうです、そこからすべてぶち上がっていった。大学4年間、何もいいことありませんでした。

カマクラ:何も・・・。別にサークルに入っていたわけでは、

ザイデン:ないです。他大のサークルとは仲よかったんですけど。

4. 追いつかない

カマクラ:自分の作品を一個まず紹介するとしたら・・・って作品はありますか?作品量すごく多いので。

ザイデン:ないですね。

カマクラ:ないんだ・・・!

ザイデン:最新のザイデンが最高の・・・。

カマクラ:そういう感じなんだ。

ザイデン:・・・ちょっと語弊ありました。なんていうか、主観と客観が全然違うので。主観で言うと、そうなんですけど・・・今が一番というか、今やってることにしか興味がないんですけど、客観で見ちゃうと、やっぱり代表作を聞いてほしいというのがあります。こういうのが好きな人には、これ、みたいな感じで。

カマクラ:なるほどね・・・。

ザイデン:歌モノとかが好きだったらこれ、とか。ノイズっぽいの好きだったらこれ、とか。

カマクラ:そしたら、聞いてくれる人に合わせて作品を提示するという感じ?

ザイデン:そうですね。いっぱいアップする人の難点はやっぱり、ここの部分ですね。きりがないというか、追いつかないというか。

カマクラ:追いつかない、というと?

ザイデン:聞く方が。ただ、名刺っぽいものをつくろうと思いながら、結局それも名刺っぽいものにならない気がするんです。なんというか、俺はこれですっていうのは、実はあてにならないというか、人間ってすごい不安定だと思うし・・・。

カマクラ:その、あてにならないっていうのはどういうことですか?

ザイデン:なんか、自分で思ってる自分と、他人が思ってる自分は違うし、自分で思ってる自分が本当なのかっていうとそれも違うし、他人のそれも違うし・・・あまりにもとりとめのないものなので・・・。たとえば、戦略として、間口を広げるために俺はこれですみたいな感じで作るならいいと思うんですけど。

カマクラ:うーん、よくわかってないかも。

ザイデン:結構僕が、打算的というか、あまり情緒がない人というか・・・。言いたいことも特にないし、メッセージみたいなものも。歌詞とかもすごい、作るんですけど、それも言いたいことがあるというよりは、脚本を書くみたいな感じで、この話にはこれ、みたいな感じでやってて。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:だから人から作品数多いですね、って言われても、僕としては全然少ないんですよ。まだまだ。

カマクラ:作ってる側は、そうなんですよねきっと。さっき追いつかないって言ってたけど、きっとアイデアがどんどん湧き上がって、手の方が追いつかないってこともあるんじゃないですか?

ザイデン:そうですね。あと、一人でやってるのとバンドは違うし・・・。即興とかするときもまた違う。ただ、違うっていっても繋がってはいるんですけどね。

5. 千葉の団地・日本の団地

ザイデン:神聖かまってちゃん、とても好きでした。今はそこまで好きじゃないけど・・・。ファーストとかセカンド、今でも聞くと泣いちゃいます。

カマクラ:なんとなく、かまってちゃんぽさもザイデンさんありますね。

ザイデン:絶対ありますね。かまってちゃん出てきたときに、ついに日本のリアルタイムで聞ける音楽がでてきた、と思って。俺たちのセックスピストルズだ、とか思ったりして。ただ、今はそんな好きじゃないですけど。

カマクラ:今、なんでそんなに好きじゃないんですか?

ザイデン:たぶん、ちばぎんってベースの人が上手くなっちゃったからだと思います。それと反比例するかのように。ちばぎんってもともとギターで、ギターの人が片手間で考えるベースだったんですよね。だからフレーズとかみんな一緒で・・・でも最近本当に上手くなって、かっこよくなっちゃって。でもそれで、あのちばぎんのベースがかまってちゃんの良さだったんだ、みたいなことに気づいたように思います。

カマクラ:なんで、ベースが上手くなって、つまらなくなったと感じたんでしょう?

ザイデン:カッチリしちゃったっていう。なんていうか、ベースがしっかりしてないと、音が浮いた感じになるんですよ。大抵はベース・ドラムがしっかりしてて、上物が変なのがカッコイイみたいな定説があって。だからジョイ・ディヴィジョンとかニューオーダーとか、ドラムは本当にしっかりしててベースもそんなにリズム外してないんですけど、かまってちゃんはドラムはタイトなんですけど、ちばぎんのベースだけ・・・。なんかフワフワしていて、何でなのかなと思ってたんですけど、それが独特のローファイ感というか、千葉の団地の駅に吐かれているゲロみたいな感じが、それによってもたらされていたんですよ、たぶん。

カマクラ:団地・・・。

ザイデン:ちょっと喉につかえる感じ。かまってちゃんは、カッチリしたバンドというより、存在がおもしろいというか、現象がおもしろいという感じがします。あの4人でやってるというのが。の子という圧倒的な人がいて、それに3人がノイズ的に存在してるのがいいと思います。

カマクラ:別に、いいのをみたいわけでは、ないということなんでしょうか。

ザイデン:そうっすね、曲はいいと思うんですけど、ただ全体像として・・・良質なものに飽きはじめているっていうか。今、スカムが流行ってるじゃないですか。

カマクラ:スカムって何ですか?

ザイデン:ダメっていうか、クソっていう感じで。スカムミュージックというのがあって、ヘタウマとはちがうんですね、本当にどうしようもない。たとえばハーフジャパニーズって知ってます?

カマクラ:いや、知らないです。

ザイデン:ハーフジャパニーズっていう、アメリカのワケわかんない兄弟がいて、その二人一切楽器できないんですけど、演奏できないギターと、演奏できないドラムで、音源作ったんです。たしか30曲2枚組でつくったり、今は普通に即興のとことかでやってますね。あとは、ストックハウンゼン&ウォークマンっていう、しょうもないコラージュをかけ続ける人たちとか・・・。そういうダメなものみたいなのが流行っているんですよね。

カマクラ:なるほど・・・。

ザイデン:スカムパークってイベントもあるくらいで、ロフトとかで。純粋にいいものを求める人はインディーロックとかシティーポップとかにいくのかなと思います。

カマクラ:かまってちゃんはそのスカムとは違うんですか?

ザイデン:微妙ですね。アルバムとしてプロデュースされてできているんで・・・。の子はどれだけ作ってるのか天然なのかわからなんですけど、の子の曲というより、存在がスカムなんだと思います。ああいう、千葉でお父さんと二人で暮らしていて、NHKで派手に演奏したり、ニコ生とかやっちゃう、存在がスカムっていう感じ。音楽じゃなく。

カマクラ:音楽ではなく・・・。

ザイデン:でも、音とかもけっこう、実は・・・。かまってちゃん好きじゃない友達とかは、音楽的に面白いところが一個もないとか、新しいとところが一個もないとか言うんですけど。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:でも、結構そうは思わなくて、ボイスチェンジャーをキーボードに置き変えて弾いたり、ディレイやリバーブの感じとか、面白いと思うんですよ。

カマクラ:ちょっとシューゲイズっぽい・・・。

ザイデン:そう、いいなと思っていて、あのサイケ感みたいな・・・。ほんと、団地っぽい。日本の団地っぽい。アメリカ人には、感覚的に民族的にできないんじゃないかって感じなんですけど・・・。あのリバーブ感っていうか。土着。土着的なんですよ。

カマクラ:うんうん・・・。

ザイデン:土着っていっても、民謡とかじゃないんですよ。ウチらの子供の頃の団地とか、家の風景とか・・・。

6. 団地とは?

カマクラ:さっきから団地、団地って結構でてきてるんですけど、団地のことはたぶん、あまりわかってないと思います・・・。団地ってだから、普通の市営住宅みたいな所のことですよね。

ザイデン:そうですね、ボロボロの、古いでっかいマンションみたいなのが並んでる。

カマクラ:その感じの音楽、ということですか?全然わからない。すごく聞きたいです。しかも、それがザイデンさんの作ってる音楽に繋がってる気がするし。

ザイデン:繋がってますね。ねこぢるって漫画家知ってますか?

カマクラ:いえ、知らないです。

ザイデン:そのねこぢるっぽさというか・・・。

カマクラ:どんな感じですか?

ザイデン:小さい頃に見た残酷な光景みたいな。たとえば、アリが大きい虫を食べていたり・・・。

カマクラ:全然わからない!

ザイデン:帰ってきたら父さんが超機嫌悪かったり・・・。

カマクラ:自分が帰ってきたら?

ザイデン:いや、父さんが帰ってきたら。あとは、近所のおばあちゃんが発狂して死んじゃったりとか・・・。そういうちっちゃい頃に見た、”えっ”って感じみたいなのを僕は・・・好きというか、とりつかれているって言ったらおかしいかもしれないけど。懐かしさじゃないですけど、そういうのすごく興味がありますね。

カマクラ:へえ・・・。

ザイデン:神聖かまってちゃんもそういうところ、すごく感じるんですよね。日本のゴシックというか。日本のそういう、昔の原風景っていうか。

カマクラ:ゴシック。

ザイデン:ゴスって言葉、知ってます?

カマクラ:いや、わかんないですね。

ザイデン:たぶんサブカルチャーの一種なんですけど、ゴスっていうカルチャーがあって、なんていうかビジュアル系の元祖とも言われていて。アメリカとかイギリスで、目を真っ黒にして、格好も真っ黒で演奏するバンドがいて、80年代のイギリスとか。それがゴシックロックって言われてたんですけど、今だとマリリンマンソンとかが受け継いでる感じ。ゴシックっていうジャンルがあって、それとは別に、もっと本来の意味で、よくない昔見た風景とかの意味があって・・・。

カマクラ:ゴシックはさっき言ってたゴス、っぽいということなんですか?

ザイデン:いや、それとはまた別で、黒塗りのゴスとは別で、いろんな意味があるんです。

カマクラ:ゴシックは、たとえばどんな意味があるんですか?

ザイデン:サブカルチャーとしての、ゴスっていうのと、

カマクラ:それは黒塗り?

ザイデン:そう真っ黒な、黒塗り。今でもそういうネーチャンとかいますよね。ただそれはビジュアル系だったりするので、それの源流がゴスなんです。ビジュアル系っていうのは音楽的にはメタルとか通ってるんですけど、それ以前にゴスとか、ポジティブパンクというのがあってそれを源流にしてるんです。

カマクラ:ゴスロリのゴス?

ザイデン:そうですね。耽美っぽい感じ。ビジュアル系はゴスとかが源流で、メタルとかと合わせて日本で生まれたもので。いま、ビジュアル系っぽいのとゴスのファッションがごっちゃになってて・・・初期のビジュアル系に近いのかな・・・。

カマクラ:うーん・・・。

ザイデン:ゴシックなんですけど、音楽ジャンルとしてあるし、そこまで詳しくはないですけど、ゴシック文学っていうのもあるんです。エドガー・アラン・ポーとか。古い怪奇、アメリカのじめっとした感じの怪奇。みたいな感じのと、悪いものにひかれること、怪奇なものにひかれること、という意味があったように思います。影の部分です。

カマクラ:ふーん・・・。

ザイデン:僕、団地って言ったんですけどいわゆる子供の時って輝いてるじゃないですか。そうじゃない人もいるかもしれないけど、無邪気じゃないですか。幼稚園行ったりとか、プール行ったりとか、友達と遊んだりとか、キャッキャしてる中で、その横で、アリを遊び半分で殺したりとか、火遊びで、爆竹でトカゲ殺しちゃったとか、そういうのも、ある意味ゴシックだなと思います。

カマクラ:うんうん・・・。

ザイデン:そういうゴシック感を、僕はたぶん好きなんです。ゴシックロックが好きな友達とこういう話をしていて、それもゴシックの一種だよねって言ってたんです。それを自分の音楽で、やりたいというか、結構強いのかなって思ってます。

7. 狛江

カマクラ:団地ネタは必須ですね。

ザイデン:そうかもですね、団地・・・汚い団地ありますよね。

カマクラ:どこ出身ですか?

ザイデン:狛江ってとこです。東京でいうところの、すごい田舎なんですけど。狛江市です。

カマクラ:どんな所なんですか?

ザイデン:ちょっと変な感じの町なんです。ちょっと暗い、ちょっと影があるっていうか・・・。栄えてはいるんだけどちょっとジメッとした感じのところです。狛江で育ったのは大きいかもしれません。

カマクラ:その狛江の、よく覚えてることとか聞かせてください。

ザイデン:すごいいっぱいありますね。まあ団地っていうのはただの象徴的なもので・・・家の近くに◯◯◯っていう団体があって、それが慈善団体なのかわからないんですけど、すごいニコニコしたお姉さんお兄さんが古いアパートの一室を借りてやってて・・・。

カマクラ:それって何歳くらいの時ですか?

ザイデン:小学校くらいの時ですね。小学校帰りの子とかを誘って、僕もその◯◯◯の前とか通ると”遊んでいきなさいよ”みたいなこと言われてたんですよ。けっこう、そこで遊んでる子もいたんですけど、僕の友達とか親とかではちょっとあそこは行かないほうがいい、みたいなことになってて。とにかくそのお姉さんたちがテンション高いんですよ。

カマクラ:うんうん・・・。

ザイデン:で、今から考えてみると普段その人たちがどうやって生活していたのか全然わからなくて。とにかくその古いアパートの一室を借りて・・・子供を遊ばせていたのかな、とても不気味で・・・っていうのとか。

カマクラ:なんか怖いですね。

ザイデン:あと、モリくんって友達がいたんですけど、そのモリくんの家庭環境が未だに謎で・・・そのモリくんの家族は林の中にある駐車場に住んでたんですよ。駐車場に、土管とか廃車とかがいっぱい重なってるところに小屋があって、そこにモリくんの家族が住んでたんです。

カマクラ:え〜!!

ザイデン:親に、なんでモリくんあそこに住んでるの?って聞いてもみんな口を閉ざしていて。家族構成はモリくんとお姉ちゃんと、お父さんとお母さんだったんですけど。

カマクラ:4人。

ザイデン:そう、モリくんの家に遊びに行った時も、家の中がワケわかんない感じになってて、迷路状態。小屋がけっこう広くて、一階だけなんですけど結構横に広くて。ジャングルって呼ばれてる部屋があって、そこを開けると布団が敷き詰められてて鉄パイプがめっちゃ刺さってるんですよ。

カマクラ:え??

ザイデン:真っ暗で天井から鉄パイプが。ここジャングルだからって言って。鉄パイプっていうか土管ですかね、全く日が差さないところで、ここで一人で探検ごっこしてるんだよ、みたいなこと言ってました。

カマクラ:小学校の友達ですか?

ザイデン:そう、モリくんっていう。で、一応テレビとかあったんですけど、本当家の中が入り組んでいて・・・、結局途中で転校しちゃうんですよ。お姉ちゃんが超やばくて、超ヤンキー。不良でよく街であばれてて、モリくんは実はお母さんの息子ではなくて、お母さんはお姉ちゃんばかり可愛がっていたから、モリくんは噂では、遠い親戚のところに預けられた、みたいなことを聞きました。そのモリくんの家ってめっちゃ猫がいて、猫と住んでるみたいな感じで、お父さんはずっと立ち尽くしてる。何して生きてる人なのかわからない。とりあえずモリくんの家にいくと、お父さんが廃車の中で立ち尽くしてる。今から思うと、廃車を処理していたのかな、と思います。

カマクラ:廃車・・・?

ザイデン:車ですね。

カマクラ:駐車場があって、小屋があるじゃないですか。その小屋の外に廃車があるんですか?

ザイデン:あ、駐車場って言ったんですけど、正確には雑木林の中に広場があって、そこにスクラップになった車がめっちゃあるんです。その真ん中にモリくんの家があって。未だによくわかんなくて、そこらへんの雑木林ってすごく露出狂がでるって話題になってたんですよ。かなり危ない地区だったんです。治安がよくないとこで・・・。小中狛江だったんですけど、様子がおかしいやつがなんだかいっぱいいて、壁に向かって話しかけてる人とか・・・。

カマクラ:・・・。

ザイデン:僕は狛江の第一中学校だったんですけど、第一中学校って五小と二小と、七小からの子供が来てるんですけど、二小が団地の子供達で、その二小の子供達はみんなおかしいやつでした。全員おかしくて、不良は超悪いし、問題起こすやつとか、少年院入れられるやつはみんな二小なんですよ。で、おとなしいやつでも頭おかしかったり、超ロリコンだったり、障害のある子だったり、二小区域は本当にそんな感じで・・・。

カマクラ:それは中学校で出会った人たち。

ザイデン:そう、二小区域って密集団地なんですけど、そこって団地感と結びつきが強くて、二小・・・第二小学校に他の地域から子供が来ると親含めて村八分にされるんですよ。引っ越してきたりとか、あとは、団地じゃなくても地域区分的に二小に行かなきゃいけなくなった子供とか。

カマクラ:すげえな・・・。

ザイデン:二小の運動会ってすごくて、親が超酒飲んで暴れるんですよ。二小はそういう、独特の村みたいな。僕は五小でした。五小が一番おとなしかったんですよ。で、五小の子供は大抵四中に行くんですけど、僕は一中になっちゃって・・・。

カマクラ:それで二小のやつらと鉢合わせた。

ザイデン:それで七人くらい、いや十人くらい、五小から一中に行ったんですけど、三人くらい不登校になりました。

カマクラ:ははは・・・。

ザイデン:環境に適応できなくて。

カマクラ:僕も中学校で他の校区の人と鉢合わせて、ショックっだったこと今でも覚えてます。そういうの忘れないですよね。

ザイデン:やっぱり感受性が豊かな時期で・・・。

カマクラ:なんか人種が違う気がしちゃうんですよ。

ザイデン:そうそう、やっぱそれって、大人になっても人種が違うなっていうのはあるじゃないですか。クラブで踊ってるやつらとか。話題とか、笑いのツボとか全然違いますよね。

カマクラ:そうですね、ノリとか、言葉遣いも違いますよね。

ザイデン:特に中学校とか、子供の頃の体験ってみんな引きずりますよね。楽しかった・・・いや、楽しくない中学校というか。

カマクラ:ははは・・・。

ザイデン:そういうのおくっちゃうんですよね。だから、今クラブとかでブイブイ言わせてたり、イケイケな音楽やってたり、今は溌剌としてる人が、昔の話を聞くとすごく暗かったりするんですよ。だから、反動でそうなってるのかなと。以外とそういうところで抑圧されたりしてるんですよね。反動で大学デビューしたり、クラブでブイブイ言わせたりする人と、暗いままで行く人とに分かれる気がします。

カマクラ:暗いままでいくやつ・・・。

ザイデン:それは持って生まれた素質なんですかね。僕は結構ブイブイ言わせたいんですよ。

カマクラ:そりゃだいたいはブイブイ言わせたいと思います。

ザイデン:でもやっぱ、暗いままでいく・・・憎しみだけを背負って生きていく人ってのもいるから、それはやっぱり素質っていうか、なんなんですかね。やっぱ持って生まれた、違いなのかもしれないですね。バンドをやってる人とか、あんまりブイブイ言わない人が結構いる気がして・・・結構暗いままでいきますね。憎しみを背負って・・・。悲しみを背負ったまま。

8. これから

カマクラ:これから音楽で、こういうの作りたい、とかあります?常に作っていると、逆にないんじゃないですか?

ザイデン:やりたいことがありすぎて・・・。うーん、音楽でなくてもよければ、金が欲しい。

カマクラ:金が欲しい。ははは・・・!

ザイデン:高所得になりたいです。

カマクラ:それツイッターで言ってましたね。

ザイデン:金が欲しいというか、そういう人種と知り合ってみたいです。すごい興味があるというか。クラブミュージックとか、トラック作ってる人って本当にみんな金あるし、仕事もちゃんとしてるし・・・。めっちゃ金回りいいし、酒も飲むし、そういうカルチャーにすごい興味があって。ぶち上がってるというか。あと、力のある人と知り合いたい。

カマクラ:そんなこと言うとは思わなかった・・・。

ザイデン:去年までどうしても、自分の周りに鬱気味というか、メンヘラ的な人が多くて今年の前半くらいにそういう人たちと袂を分かつ機会が多かったんです。

カマクラ:関わる人間を変えていきたいということですか?

ザイデン:そうですね、大雑把に言うと・・・変わっていくんです。結構、舞台の音楽作ってた時は、ずっと変わらない人が多かったように思います。何も取り入れず、曲げない。それがきつくて、もう一緒にはやりたくないな・・・と思ってしまいました。

カマクラ:なるほど、変わっていく・・・。

ザイデン:そう、あとはあまり音楽のことをグチャグチャ言っててもしょうがないと言うか、グチャグチャ言う力があるなら・・・。

カマクラ:今日は喋ってくれて本当にありがとうございました。それなのに喋ってくれたという感じ。

ザイデン:いえ、グチャグチャというのは今日のようなことではなくて、文句というか、周りの人間への批難のことで、そういうエネルギーが無駄だなって思うんです。自分で何かしたほうがいい。嫌いな人たちや、好きじゃないシーンの人たちもビックリするようなことをしたいなと思います。ポジティブな方向に。

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